2016年5月26日木曜日

オーストラリアの地史を探るーHallett Cove Conservation Park

 ハレット・コーブ保護公園。オーストラリアの地史を知るうえでの重要な場所です。

アデレード駅から列車で30分ほどでハレット・コーブ・ビーチ駅に到着。
閑静な住宅地で歩いている人は見かけません。公園は観光地というより教育のための場所らしい。
途中で地元の人が教えてくれた道を行くと小さな入り口に来ました。
人影もなく、不安になります。とにかく 歩いてみます。
突然飛び込んできた、異様な光景に息をのみました。眼下に広がるのは青い海とは対照的な赤褐色と白の荒々しい断崖です。
ここは野外劇場(Amphitheatre)と呼ばれる大露頭の縁です。ガイドマップにはないコースを歩いているらしい。
 さらに進んで、分岐点から全景を見渡します。写真には収まり切れない。
はるかにシュガーロフ(Sugerloaf)の小山が望めます。
野外劇場の全貌です。
シュガーロフの周りでは小学生の一行がスケッチをしています。
不思議な山です。ベースとなる赤い粗い砂岩は6億年ほど前の先カンブリア紀の地層。アイスクリームのように盛り上がった地層は2億8000万年前の古生代ペルム紀の湖底に堆積した地層。その上の赤いキャップは200万年前の堆積物です。
白い地層は氷河の堆積物であることがわかっています。気候が変わり氷河が溶け、そこに含まれる細かい砂が堆積したやわらかい地層です。姿を現した地層は風雨にさらされ浸食されてこのような形になりました。
しばしばそれを固い地層が覆います。この地層は
300万年前の貝殻を含んだ砂層です。固さの違いで下の古い地層がえぐられています。年代のギャップは2億7000万年以上になります。
 
海岸に降りて、ここが通常の出発地点。かなたにブッラク・クリフ(Black Cliff;黒い絶壁)が見えます。
 
ブラック・クリフは6億年前の黒い地層です。この地層を覆った氷河の証拠を見るために、絶壁の上に登ります。
 
これが2億8000万年前の氷河の証拠です。先ほどの絶壁の上面が氷河の移動でツルツルに磨かれ、その時の引っかき傷が手前から海の方向につけられています。1875年にアデレード大学のラルフ・テイトによって発見されました。
氷河が融解するときに大きな岩も落としていきます。
オーストラリアは南極を含む大きな大陸の一部だったのです。
雄大な光景はさらに続きます。Shore Platform(海岸の停留所でしょうか) と呼ばれる、大褶曲と洗濯板のような平坦面が現れます。2万年前の最終氷期に海面が約130mほど低下し崖が浸食されました。足元は大褶曲の水平断面です。(いくら背伸びをしても小さな存在です。)
平坦面との境界が当時の海岸線です。
この海退は日本にも起こりました。東京湾は干上がり深い谷が刻まれました。海峡の低いところは陸化し生物の移動が起こりました。
その後6000年ほど前にふたたび海面の上昇があり現在に至ります。
それも世界規模の現象で、ヨーロッパのフランドル海進、日本では縄文海進に相当します。
途中に小さな滝がありました。昨日は大雨でしたが、その水が現在・数百万年前・2億8000年前・6億年前の地層を削って南極の海に流れていきます。
同じ道をもう一度戻り、野外劇場の上縁に立つと地球の鼓動が聞こえます。
半日ほどの壮大なタイムトラベルでした。
アデレード駅に着くと、これまで感じたことのない懐かしさに包まれました。
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参考に案内板の一部を付けます。
観察ルートが示されています。
地質の概念図です。
氷河地形が説明されています。



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