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2021年6月17日木曜日

クモの口をのぞくーアシナガグモー

  夜になると決まって壁面灯の下に登場する細長いクモがいます。アシナガグモ(Tetragnatha praedonia:アシナガグモ科)です。


 斜めに張った円形の網の真ん中で,歩脚をまっすぐ伸ばしています。
 体長(頭の先端から腹の後端)は1.5 cmほどですが,伸ばした長さは3倍ほどあります。

 朝になると隠れて見えなくなりますが,黒い鉄枠にじっとしていることもあります。

  今日も夕方からせっせと網を作り始めました。
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 目は単眼が4個づつ上下2列あります。輪郭ははっきり見えていないらしい。
 腹部の後端には糸を出す出糸突起があります。
 頭胸部の腹面には脚の間に口器が観察されますが,私たちとの比較では分かりにくい配列になっています。
 歯が2列についている上顎には先端に牙があり,折りたたみナイフのような形状です。
2列の歯はこの牙と咬み合うことで,物をはさみます。牙には毒腺の射出口があります。
 上顎と牙は脚の変形で”鋏角(きょうかく)”とよばれます。下顎も脚(触脚)の基部の変形で内側には唾液腺があり消化液を出します。下顎と胸板の間で上唇と下唇が口を形成しますが,クモは体外消化で液状になった獲物の組織を吸い込むように摂食するので,口には噛むための装置は不要です。網には中身のない殻だけが残ることになります。
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 アシナガグモの口をのぞいただけでも不思議です。クモの仲間(鋏角類)にはまだまだ面白いことがありそうです。

2017年8月21日月曜日

リニューアルを待つー野尻湖ナウマンゾウ博物館

 今年も宿題を抱えて野尻湖発掘調査団・哺乳類グループの合宿調査にやってきました。
お盆を過ぎても「野尻湖ナウマンゾウ博物館」
は盛況でした。
発掘遺物は収蔵庫に整理・保管されています。
博物館の外の作業場では「昆虫化石を探す」イベント。大人も子供も真剣でした。
翌日は「ゾウに触る」イベントも。大きさに驚きます。
学芸員は調査のかたわら,大忙しです。
野尻湖発掘調査団所蔵
私の仕事はオオツノジカ上腕骨の記載です。
長い間隔を置いて発見された遺物が,年を超えてつなぎ合わされました。
論文の完成に向けた,
合宿調査のメンバー(8/21当日)
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博物館入口の向かいにそびえる2本の「ドイツトウヒ(ヨーロッパトウヒ)」
Picea abies マツ科 トウヒ属
柱時計の振り子風の球果(松ぼっくり)(左のスケールは1cm目盛)
「オニグルミ」
Juglans mandshurica var. sachalinensis クルミ科クルミ属
「キボシカミキリ」
Psacothea hilaris カミキリムシ科
「黒姫山」にもようやく夏の雲が戻りました。
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博物館は合宿調査の後,改修工事に入りました。
来年3月20日のリニューラルオープンを楽しみにしましょう。


2015年11月11日水曜日

ネコ(Felis)の名を持つクモーDictyna felis

付属病院の生け垣に,ポツポツと小型の網がかかっています。
形が定まっていないクモの巣です。
よく見ると,結構な数の虫がかかっています。
ボロ網とも呼ばれます。主人はどこ?
5mmほどの小型のクモ。背中の模様を頼りに検索すると・・
ネコハグモ Dictyna felis
節足動物門・鋏角亜門・クモ綱・クモ目・ハグモ科
Felisは哺乳類のネコ属のことですが,どこが似ているのでしょう。

2015年10月25日日曜日

松戸祭 2015 ークモも歓迎

 今年の松戸祭は好天に恵まれました。
出店が並ぶメインストリート。
クモの網が来客を待っています。管状住居のトンネルが見えます。
家主を見つけました。
「コクサグモ」
Allagelena opulenta タナグモ科
小型のクモで頭胸部に白い条の入った褐色の帯があります。
夏から秋にかけて,生け垣に普通にいます。
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松戸祭の期間中に電子顕微鏡室も公開されます。
各種の研究と細胞診の業務に使用され,通常は入室が制限されています。
電顕委員の案内で,
走査型(上)・透過型(下)の電顕を操作することもできます。

2015年9月26日土曜日

幼虫が有名ですがーアリジゴク

今日は衛生士専門学校の「戴帽式」でした。最も大切な行事です。
大きな節目を迎えられ,これからの成長が期待されます。
式の後,玄関ホールで写真を撮りなごやかに談笑する姿がありました。
校舎の壁にひらっと貼付いた昆虫を見つけました。
腹部より大きな透き通った羽。
細長い触角。緑に輝く眼。
腹部の段々の模様。羽にはシミのような褐色の斑紋があります。
海老原智康先生(総合診断学講座)が
「ホシウスバカゲロウ」と同定しました。
Paraglenurus japonicus
アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科
幼虫は「アリジゴク」と呼ばれる独特の形をしています。
千駄堀の野外実習で東屋の軒下などで目にする「アリジゴク」。
しかし,ホシウスバカゲロウの幼虫はすり鉢形の巣を作りません。
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アリジゴクの世界はまだ分かっていないことが多いようです。
調べてみたら面白いかも。

2015年7月24日金曜日

カミキリムシ 2題

昆虫採集が思い出される季節です。
海老原 智康先生(歯科総合診療学講座)から「カミキリムシ」の情報が2題寄せられました。
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【クロカミキリ】
日時:平成27年6月20日(土)、AM8:25
場所:駐輪場付近
 強大な大顎に太く短い触角と四肢。まるでクワガタムシのような姿をした種類です。
手に持つとすぐに噛み付こうとするのもクワガタムシの習性とよく似ています。
成虫は夜行性で、ときに外灯の光に集まることがあります。
 幼虫が針葉樹の幹(材)を食べるため、県内では沿岸沿いの松林に広く分布しているようです。しかし、内陸では針葉樹林が少ないためか、あまり見かけることは無く、こと松戸市内においては、ほとんど観察例が無いのでは?と思います。
 また、近年本種は全国的に個体数が減少している(原因不明)といわれており、今回の記録は大変貴重なものではないかと考えています。
(写真は採集後に室内で撮影したもの。)
クロカミキリの発見場所(駐輪場)
クロカミキリ Spondylis buprestoides
甲虫目 カミキリムシ科
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【キボシカミキリ】
日時:平成27年7月24日(金)、PM2:25
場所:校舎棟2階・旧病棟への連絡通路
 体中に散りばめられた黄色い斑点が美しいカミキリムシです。
 幼虫はクワやイチジクの幹(材)を好むため、畑など農耕地周辺に多く生息しています。大学周辺でも毎年発生している場所がありますが、構内で姿を見つけたのは初めてのことです。発見当日は風が強く吹いていたため、近隣地域から風に乗って運ばれて来たのかも知れません。
 外側に回ることのできないガラス窓に止まっていたため、採集は叶いませんでしたが、何とか写真に収めることはできました。(背面の様子が分かりにくいため、参考として6月28日の『千駄堀観察会』で撮影した別個体の写真を載せます。)
キボシカミキリの発見場所
キボシカミキリ Psacothea hilarious
甲虫目 カミキリムシ科
                 (以上)
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 触角の短いクロカミキリと,体長の2倍以上もある触角を持つキボシカミキリの取合せが面白いですね。
  カミキリムシの幼虫は幹に孔をあけてしまうこともあり(鉄砲虫とも呼ばれる),養蚕や果樹園などでは害虫にされているものも少なくありません。
「甲虫の世界」ハーバード大学自然史博物館にて(2015/03/12)



2014年12月6日土曜日

越冬の繭(まゆ)はどこ

  師走に入り,いよいよ冬の雰囲気です。
夏の名残り,セミの抜け殻。
サクラの木に小さな卵の殻のようなものがいくつも付いていました。
これはイラガの仲間の繭(まゆ)です。
色が似ているので樹皮の一部のようにみえます。
幼虫が繭をつくりその中で蛹(さなぎ)で冬を過ごすと考えられています。
しかし,少し歩き回った限りでは穴の開いた繭ばかり。
成虫になって出て行ったものだけでした。
殻の中に何かが見えています。
スケールは1mm
樹皮からはがして裏返すと蛹の一部が残っていました。
クモの巣が掛かかり,黒い虫がみえています。
蛹の腹部です。脱皮する前に食べられたようです。
誰が食べたのでしょう。
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この繭は「ヒロヘリアオイラガ」,
Parasa lepida (チョウ目イラガ科)のものです。
1920年代に南方から侵入した外来種で,1960年代から関東に広がったようです。
幼虫と成虫は見つけたら紹介しましょう。
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気になる黒い虫は
数日後,同じ場所で死んでいました。脚は6本。
このクモの巣の持ち主ではないようです。

2014年11月27日木曜日

幻のクモ・ナゲナワグモーNatureSeminarNo.8

 幻のクモと呼ばれる「投げ縄グモ(ナゲナワグモ)」を主賓に,クモ学への招待となるセミナーでした。
レポーターは楠瀬隆生先生(生物学)。
 イントロダクションでは糸をつくるの体のつくり,面白い習性,網を張らない仲間などクモの世界の多様性が紹介されました。
 投げ縄グモの話題になり,粘球をつけた糸(投げ縄)の正体は何か,フェロモン臭を利用してオスのガをとるらしい,など興味深い話が続きます。
そして,いよいよ今回の発見が紹介されました。


これが貴重な日本の投げ縄グモ「ムツトゲイセキグモ」。
コガネグモ科 Ordgarius sexspinosus
南方系で体長は1.2cmほどの小さなクモ。昼間は葉の裏などでじっと動かず餌は夜にとるので発見が難しい。
発見者は海老原智康先生(総合歯科診療学)。「これは......!」と楠瀬隆生先生の所へ持ち込み,調べた結果「やはり........!」と判断されたそうです。
発表後も質問は続き,楽しいデスカッションになりました。
クモの世界は奥が深く,次の機会も期待できます。