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2018年11月24日土曜日

動物園実習ー松戸自主夜間中学

 理科の授業”進化をさぐる”の実習として,上野動物園の見学を企画しました.
上野駅に集まった参加者(9名)は正門に移動して開園を待ちました.
開園20分前,すでに大勢が押し寄せていました.
パンダに会いに来た人が大半とか.(今日のパンダ舎待ち時間は120~150分)
今回はパンダを除いて園内を隈なく巡ることにしました.
まず,日本のエゾジカに朝の挨拶です.
サルの仲間から見ていきます.
アシビニアコロブス(上),ジョフロイクモザル(中),ブラッザグエノン(下)はアフリカや南米の多彩なサルたちです.子供のクモザルの尻尾は器用に巻きついています.
そして,サル山のニホンザル.最も身近な霊長類で青森県下北半島の出身です.
ゾウ(アジアゾウ)はいつも人気があります.
赤ちゃんの授乳を思い出してゾウの乳首の場所を皆で探しました.
ありました,前足の付け根近くです.
シロテナガザル.私たちに近い”類人猿”に所属します.
もう一人の類人猿,ゴリラ.
ゆうゆうと周りを見据えています.
南米の哺乳類,アメリカバク.癒される寝顔です.
思わず写真を撮りたくなります.
東園にはクマ,ライオン,トラ,アシカ,アザラシなどなじみの哺乳類がいます.
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肌寒い1日でしたので,
西園の小獣館はちょっとホッとします.
それぞれの楽しみ方で観察します.
西園にはペンギン,ペリカン,ハシビロコウなど人気の鳥たちがいます.
両生爬虫類館は必見です.
どうしてもヘビやトカゲは好きになれず,入館しないヒトもいました.
チリメンナガクビガメだけ紹介します.
最後の見学ポイント,不忍池を渡りアイアイの住む森に向かいます.
マダガスカル島に住む原始的な霊長類が主役です.
ワオキツネザル(上),クロシロエリマキキツネザル(中),クロキツネザル(下)など,進化をたどるうえで貴重なサルたちです.
正午終了の予定が,解散場所の弁天口に着いたのは12時45分.
案内者が一番夢中になっていたとの声もありました.
写真はサルが多くなりましたが,ほぼ全ての動物に会いました.
次の授業で実習の様子を皆さんに紹介し,”まとめ”をしようと思います.
(参加は高橋さん,安さん,泉さん,泉くん,花澤さん,高木さん,熱田さん,高さん,伊藤くん)

2017年3月30日木曜日

オポッサムの顎を調べるー解剖学会発表

 有袋類のオポッサム”ハイイロジネズミオポッサム (Monodelphis domestica)”はマウスとラットの間ほどの大きさですが,妊娠期間は14.5日と短く未熟な状態で生まれます。しかし,自力で母親の乳首にたどり着き,乳を飲まなければなりません。それに必要な体の部位は有胎盤類とは異なる発生過程をとると考えられます。今回は、顎の発達を形態的に追うことにしました。
生まれて間もない(2日目)親子です。
オポッサムは有袋類といってもカンガルーのような袋がありません。
生まれたばかりの新生仔の姿です。後ろの目盛りは1mmです。
前肢の発達を思わせるように、指には爪がついています。
新生仔のCTの画像です。前肢と顎の部分の骨化が進んでいます。
 生まれてから成獣になるまでのオポッサムを,動物センターに設置されているX線CT(リガク:μCT CosmoScan)で撮影し、変化を読み取ります。
 動物実験には厳密な審査が義務付けられます (承認番号AP09MD023, AP12MD015, AP14MD014)。

下顎骨では筋突起の発生が早く,顎関節をつくる関節突起は10日を過ぎて後方へ膨隆してきます。2週目近くなると関節突起の上方への発達が始まります。下顎窩がそれを受けますが、側頭骨頬骨突起と頬骨は5日過ぎに細い棒状に出現します。顎関節らしくなるのは25日目あたりですが、下顎頭の上面は弯凹していますし下顎窩にあたる窪みはありません。オポッサムの顎関節としての形態は40日を経過して観察されました。私たちの飼育下では40日頃から親から離れはじめ,60日頃から自分で飼料を食べるようになります。この間に顎関節の機能が完成されると思われます。
左矢印:関節後突起、右矢印:頬骨
 オポッサムの成獣の下顎窩は関節後突起が発達して深く、また関節面には頬骨の一部も含まれます。ラット等では側頭骨のみです。
ここまでのまとめを長崎大学で開催された日本解剖学会(3/27-30)で発表しました。
  爬虫類の発生の研究者や耳の進化を考えている研究者、腎臓の組織の研究者など多方面からの関心を得られ、うれしく思います。しかしまだまだ、残された問題が多くあります。

2017年2月17日金曜日

イノシシの頭蓋骨をつくるー生物学・自由発表

   今日(2/17)は学年最後の「総合試験」。
準備の結果がついてきますように。
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試験終了後、自由発表の時間をとりました。
選択科目「生命の文化誌」の舘山馨・中沼祐汰・鈴木健斗・松本和之君たちの発表です。
哺乳類の頭蓋骨の構造がテーマです。
イノシシの頭(楠瀬隆生先生が提供・指導)の皮を剥ぎ、肉を落とし、骨にするまでの過程を説明していきます。手を動かして初めてわかることが多いのです。
少しずつ約3ヶ月間。洗浄し脱脂して、作業中に分離した骨を接合していきます。
(発表スライドから)
若いイノシシの頭蓋骨の標本が完成です。前後長約26cmでした。
(発表スライドを一部改変)
成獣と比較すると大きさがかなり違います。
雑食を示す鈍頭歯で、歯式は哺乳類の基本歯式と同じです。犬歯(牙)は無根歯で伸び続けます。しかし、乳臼歯(m)が3本であるのに、代生歯である小臼歯(P)が4本になっています。
クラスの仲間は試験終了後にもかかわらず、熱心にプレゼンテーションを見つめます。
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補足しましょう。
上:i:乳切歯,c:乳犬歯,m:乳臼歯,
下:I:切歯,C:犬歯,P:小臼歯,M:大臼歯
歯の交換に注目します。
今回の標本は第一大臼歯(M1)が萌出しています。第一小臼歯(P1)は顎骨の中にあり、このまま永久歯として萌出します。したがって”一生歯性”です。
         (乳歯列と永久歯列の比較。黄色の線はm1-m3の幅を示す)
若い個体(上:Juvenile)は顎も歯列全体もかなり小さいのですが、3本の乳臼歯(先行歯)の近遠心径の総和(m1-m3)は、成獣(下:Adult)の代生歯の近遠心径の総和(P2-P4)より大きくなっています。特に第三乳臼歯は長いのが目立ちます。これは交換時の萌出空間を確保するしくみです。
 ヒトにも同様の現象があり、(乳犬歯+乳臼歯)の近遠心径は(犬歯+小臼歯)のそれよりも大きく、その差を”リーウェイ・スペース(leeway space)”と呼んでいます。
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発表後にクラスの仲間が書いてくれた感想は、好意的な評価がほとんどでした。
後日、乳歯と永久歯の関係について確認するためにもう一度集合しました。

2016年12月27日火曜日

野尻湖,そして海の哺乳類−信州新町化石博物館



 クリスマス気分を切替えるように,12月25日から野尻湖発掘調査団・哺乳類グループの調査合宿に加わりました。
          黒姫駅から眺める黒姫(左)と妙高(中央右)
         今回はオオツノジカの記載を担当します。
(博物館の近藤氏と哺乳類Gの間島氏(オレンジ))
20年以上も発掘間隔が離れている化石が奇跡的に接合しました。
詳細は発表までの楽しみにしておきましょう。
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見ておきたい化石のある長野市内の博物館に足を伸ばしました。
バスが出るまで,善光寺の門前で「おやき」をいただきました。
長野駅からバスで40分。犀川(さいがわ)沿いに山間部に入っていきます。
信州新町化石博物館。
この地域にいた海生哺乳類の化石が展示されています。
信州新町付近からはクジラの化石が多産しています。
頭の部分から口の先までが出土した500万年前のセミクジラ。
上顎骨の前部が下に曲がるセミクジラの特徴を持ちます。体長15m前後と推定されています。
最初の発見は1938年でしたが,新種の「シンシュウセミクジラ」Eubalaena shinshuensis 
として2007年に記載されました。セミクジラとしては世界最古です。
こちらはセイウチの仲間,「オントケトゥス 」Ontocetus sp.
450万年前に生息していました。
この立派な頭蓋標本も「オントケトゥス」。
体長は3~4mと推定されています。
現生のセイウチと比べると犬歯が短く強く下を向いています。そしてセイウチでは失われた切歯を持っています。
アシカの仲間(Otariidae)の下顎。安曇野(あずみの)市で産出。
1,300万年前の世界最古の化石です。これまではカリフォルニアから出土した700万年前のピタノタリア(Pithanotaria)が最古とされていましたので,600万年も古いアシカの先祖となります。
ダイカイギュウの仲間「ドゥシシーレン」Dusisiren sp.の肋骨。北太平洋に生息していた大型の海牛の仲間。
これは400万年前の化石ですが,ヒトの乱獲によってつい250年ほど前に絶滅しました。
アザラシに近い仲間の「アロデスムス」Allodesmus sinanoensis (デスマトフォカ科)
1,500万年前。松本市から出土。
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日本列島の中央に位置し山岳地帯でもある長野県から海生哺乳類の化石が産出するのは,
当時,北(今の日本海側)から大きな古信州湾が広がっていたと考えられています。
博物館ホームページから
(*権田層のヒゲクジラが「シンシュウセミクジラ」を示します)
博物館の展示から
一方,この付近からはゾウやシカなどの陸生哺乳類化石も産出します。北アルプス付近に生息していたのでしょうか。
隣接する美術館(手前)と有馬生馬記念館(赤い洋館)。