2013年12月27日金曜日

紅(べに)を引く

中庭のケヤキの幹には寒いこの時期でも緑の苔(こけ)が着いています。
近づいてみると,小さな花のような胞子のうを付けていました。
ヒナノハイゴケ(Venturiella sinensisヒナノハイゴケ科,別名クチベニゴケ。
胞子をつくる朔(さく)には,帽(ぼう)と呼ばれる傘のようなものが付いていました。これがとれると赤い蓋(ふた)があらわれます。
蓋の周りの口環(こうかん)の部分は紅色の朔歯(さくし)と呼ばれるギザギザになっています。
クチベニゴケの名前の由来でもあります。
朔の中で減数分裂が起こり胞子が形成されます。
蓋と朔歯の間からできたての胞子がのぞいていました。

2013年12月21日土曜日

オオヒメグモ ー 第1回ネイチャー・セミナー

 ネイチャー・セミナー(Nature Seminar )と銘打って,自然の観察や写真撮影が趣味という人たちの交流会をひらきました。第1回を12月19日,17:15から生物学準備室にて。忙しい中を教員と大学院生合計6名が集まりました。

 先日の”コガネグモ”の発見談(海老原先生)や”ワスレナグモ”の珍しい生態を記録した動画(桑田先生が撮影)を鑑賞しました。クモがかなり注目されました。
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後日,校舎の外壁を探してみると,ゴミのように動かないクモを見つけました。
体長は7㎜程度で丸い腹部の地味なクモです。
プラスチックの瓶に入れておいたら,まばらな網を張っていました。
オオヒメグモ Achaearanea tepidariorum ヒメグモ科
1年を通してごく普通にみられるクモです。
(毒蜘蛛で有名なセアカゴケグもヒメグモ科)
腹部の後端近くに糸を出す突起があり,歩脚の付け根近くに雌の生殖器があります。

2013年12月19日木曜日

ラットから探る

 哺乳類の形態をラットの解剖によって理解します。体部と頭頚部の2回に分けて解剖実習が実施されます(今年は12月2,3週)。(実習は実験動物倫理委員会の承認を得ています。)動物実験の意味を考えることも重要なテーマです。

 実験動物に「黙祷」をして開始します。
手技の説明とデモ,観察項目の説明からはじまり,2人で1体を解剖していきます。
胸部・腹部内臓の位置関係,形,大きさ,色などを確認していきます。
スケッチをして所見を加えていきます。
1回目はここまでです。
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2回目の頭頚部は細かい観察が必要になります。
骨,筋,神経,唾液腺などを確認します。
上顎と下顎を開き口腔内を観察します。
口蓋,舌,顎関節を確認します。
上下顎の歯の形態をルーペで観察します。
頭蓋骨を割りながら脳を出していきます。
嗅脳部分の骨は相当硬い。
脳の形態,脳神経をルーペで観察します。
1回目,2回目とも最後に再び黙祷をして終了します。
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 ヒトの体も基本構造ではラットとかわりがありません。生殖器や歯のつくりは詳細に観察しました。発展的な学習につながることを期待したい。


2013年12月13日金曜日

コガネグモー絶滅危惧種

 冬の構内にコガネグモがいました。(2013.12.13)
 発見した海老原智康先生( 歯科総合診療学)から,記事をいただきました。


「校舎棟1Fの廊下(中庭、駐輪場に抜けるガラス扉のある所)を歩いていたとき、中庭に面した校舎の外壁に1頭のクモがいるのを見つけました。
遠目にも大きく見えたそのクモは、よく見ると体長2cmを超える(脚を広げた先までだと5cm近くになる)大型のコガネグモ(クモ目コガネグモ科)でした。
寒さのためか、触ってもほとんど動きませんでしたが、周囲には網(クモの巣)を張っていた形跡もあったことから、暖かい日には活動していたようです。
 ところで、大学を含めた栄町周辺で本種を見たのは初めてです。
恐らく松戸市内でもそう多くは生息していないと思われます。
本種を含めたクモ類の大半の種は、幼体の時期にバルーニングといって、腹部の先(糸疣)から空に向かって糸を出し、風に乗って長距離を移動する習性が知られています。
もしかしたら、今回の個体もどこか遠い地から風に乗って飛んできて、大学敷地内に住み着いたのかもしれませんね。」
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 黄色と黒の太い帯模様の大きめのクモでで,かつては草原などで普通に見かけました。クモの巣のとことどころに白い太めの糸で足場が編んでありました。
コガネグモどうしを戦わせる「クモ合戦」という遊びをする地域もありました。



 環境省のレッドデータカテゴリーによると,千葉県では絶滅の危険が増大している「絶滅危惧II類」に分類されています。
寿命1年のコガネグモ,来年も見ることができるのでしょうか。

2013年11月25日月曜日

猛禽(もうきん)類,出現

 大学構内にハヤブサの仲間が出現したとの情報が寄せられました。
海老原智康 先生(歯科総合診療学)からの記事と写真を掲載します。
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大学の中庭を歩いていると、上空から「キッ・キッ・キッ・・・」という鋭い声。

空を見上げると、空中の一点に留まり停空飛翔(ホバリング)をするチョウゲンボウ(ハヤブサ目ハヤブサ科)の姿がありました。
11/22, 大学構内
 本種の大きさはハトくらいで、決して大きな身体ではありませんが、ネズミや小鳥、トカゲ、昆虫などを襲って食べる立派な猛禽類です。
 普段は緑の多い江戸川の河川敷周辺で暮らしていますが、餌が捕り難くなる冬季には、獲物を探して大学構内や栄町の住宅地にもやって来ることがあります。
11/22,大学構内
 朝や夕方のうす暗い時間の方が行動が活発になるようで、夕闇の中をひらひらと飛びまわる姿を見ることもあります。
 みなさんも通勤・通学時間にはぜひ空を見上げて、チョウゲンボウの姿を探してみてはいかがでしょうか?」
追加:12/06.江戸川河川敷にて
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 チョウゲンボウ長元坊,Falco tinnunculus)はアジア・ヨーロッパからアフリカにかけて広く分布する小型の猛禽類です。江戸川の河川敷のような開けた生態系が生活を支えていますが,営巣場所がこの近くにあって一年中暮らしている(留鳥)のか冬になって別のところから移動して来たのか,興味のあるところです。

2013年11月14日木曜日

カエルの発生を追う

 脊椎動物の体のできかたを理解するために,カエルの胚を使った実習を2回実施しています。1回目は未受精卵からオタマジャクシまでの発生を10段階に分けた胚で観察します。2回目は2つの発生段階の胚の断面を観察します。
 サンプル瓶からカエル胚を時計皿に移して,細い筆(点付け筆)で動かしながら発生の順序を確認します。
 1つ1つの胚をよく観察しスケッチしていきます。
各発生段階の胚の部位名や特徴を記入していきます。
1回目はここまでです。
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 発生現象の実際を外部形態の変化から理解します。ヒトの発生とは異なる点も多くありますが,将来の学習へのステップになるでしょう。

2013年11月9日土曜日

遺跡と野外実習

 千駄堀の野外実習では縄文時代の竪穴式住居を見学します。
この付近では縄文時代最古の出来山(できやま)遺跡が発掘されており,その後,旧石器時代(1万6000年前まで)の遺物も含むことがわかっています。
 今月,松戸市立博物館で「発掘60年史」が開催されています。
 縄文中期の「中峠(なかびょう)遺跡」(4500年前)から出土した頭蓋骨(3Dプリンタによるレプリカ)が新潟大学から出展されていました。
松戸市の遺跡群(オレンジ色)。松戸駅の西側,本学部がある江戸川流域の地域は海でしたので遺跡はありません。
縄文前期(6000年前)幸田(こうで)貝塚(現在は消滅)の1970年頃の発掘写真。住居祉も多数(160ヶ所)ありました。

 旧石器時代の3万5000年前と推定される,松戸市最古の遺跡「関場遺跡」の石器。
千葉県最古の遺跡は3万8000年前の「草刈遺跡」(千葉県市原市)とされているので,これはかなり古いものです。
          
 石器の材料は長野県(麦草峠,冷山)や栃木県(高原山)などの黒曜石が使われていました。人,物,文化の交流があったと考えられます。
 人間の活動の変化と共に生物との多様なかかわり合いが生まれてきます。野外実習に遺跡の見学が含まれる理由でもあります。



2013年11月2日土曜日

イヌの歯から考えるトリボスフェニック型臼歯

 先月の実習で哺乳類の歯を比較しました。
 イヌは身近な哺乳類ですが,日常では歯を見る機会は少ないようです。
動物センターにあるビーグル犬の歯を見てみましょう。
歯式は3・1・4・2/3・1・4・3=42。哺乳類の基本歯式に近い。
(I:切歯,C:犬歯,P:小臼歯,M:大臼歯)
右側上顎第一大臼歯と第四小臼歯の咬頭。
(pr:プロトコーン,pa:パラコーン,me:メタコーン,hyハイポコーン,pal:パラコニュール,mel:メタコニュール,trb:トリゴンベイスン,tab:タロンベイスン)
左側下顎第一大臼歯(舌側から)。
(prd:プロトコニッド,pad:パラコニッド,med:メタコニッド,hydハイポコニッド,end:エンドコニッド)
頬側から咬合をみると。
上顎P4のpa--meのつくる鋭い稜と下顎M1のpad--prdの稜はすれ違うように肉を切り裂きます。一方,上顎M1の中央のくぼみ(trb)に下顎M1のhydがはまり込むように食物をつぶします。
舌側から見ると,上顎M1の舌側よりのくぼみ(tab)に下顎M1のendがはまり込むのがわかります。(medは上顎のprの側面とすれ違って肉を押さえる働きのようにも見える)
イヌの仲間は食肉類としての歯の特徴を進化させてきましたが,それでもなお,多様性の元となった切断とすりつぶしの機能を持つ”トリボスフェニック型臼歯”のしくみが見て取れます。


2013年10月31日木曜日

哺乳類の歯を比較する

この時期には,生物学実験(1年後期)で動物の歯を観察します。標本は日本大学生物資源科学部の獣医解剖学研究室から毎年お借りしています。ウシ,ウマの大きな頭蓋骨に圧倒されます。ブタ,イヌの歯もスケッチはむずかしい。
ウシの上顎は切歯がないのか?
ウマの頭はとにかく大きい。四角い臼歯が並ぶ。
食べているブタとは頭蓋骨のイメージが違う。
イヌの歯も臼歯は複雑。
ネコの歯も見てみたい。
ヒトの歯を哺乳類の多様性からとらえる視野を持つことが期待されます。

2013年10月27日日曜日

野外実習「新」コース

 千駄堀野外観察の最終回(10/27)は秋晴れになりました。
参加者9名のうちリピーターが5名。少しコースを変えてみました。
パークセンターによって展示をのぞいてみました。
いろいろな植物の匂い(香り)を嗅ぐコーナー。
千駄堀の成り立ちの展示も。
千駄堀池(人工)の反対側からいつもの観察エリアが対岸にのぞめる。
人工の島(木立が見える)や浮き島がヒトとの距離を保ちます。
島の倒木には甲羅干しをする多数のカメがきらきら光って。
(おそらくほとんどが)ミシシッピアカミミガメ。
自然観察舎に展示されたオオタカの剥製。
生態系の頂点に陣取り,他の野鳥が姿を隠してしまうことも多くなりました。
千駄堀を守る会の皆さんと「まとめの会」をし,無事解散。
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本日の鳥類リスト:カイツブリ,カルガモ,キンクロハジロ,オオバン,ハクセキレイ,セグロセキレイ,ヒヨドリ,モズ,シジュウカラ,エナガ,スズメ,ハシボソガラス,ハシブトガラス