2017年1月22日日曜日

千駄堀の冬を歩くー野外学習のまとめに代えてー

 2016年度の野外学習は2017年1月の千駄堀が最後です。リピーターも含めて20名の参加でした。これまで4,5,6,9,11月の第4日曜日に実施してきました。松戸歯学部の1年生(約130名)は必ず1回は参加します。ここ数年は1回の参加者を25名以内に制限し、各自がレポートとしてB4用紙にポスターを作成し、学内に展示してきました。
9時10分,公園中央口でガイドマップを見ながら千駄堀の地形と学習の概要を確認します。
本日の観察ポイント。ここ数年の定番コースです。
濃い緑は台地と斜面、薄い緑は低地です。”谷津(やつ)”と呼ばれる地形です。
低地は田圃(たんぼ)として利用されてきました。
撮影:海老原智康先生
公園に入るとすぐに「アトリ」の群れが目につきました。
Fringilla montifringilla スズメ目アトリ科,
冬鳥としてシベリアから渡ってきます。
春・夏はこの付近で「アリジゴク」の観察をします。
今回は「コモ巻き」をしてある木で、昆虫の生態調査の仕掛けを見ました。
「湧水」があった地点は万貫田(現:光と風の広場−芝地)の奥になります。
千駄堀を潤す源ともいえます。台地の斜面の際(きわ)一帯からボコボコと湧き上がっていました。眼病に効くといわれ,東京方面から水を汲みにきた人達もいたと聞いています。
楠瀬隆生先生からクモの越冬について説明を受けます。
撮影:楠瀬隆生先生
上は「ナゲナワグモ」の仲間の卵嚢ではないかとのこと。
大変珍しいクモです。(2014/11/27「幻のクモ」で紹介)
下は「コガネグモ」の卵嚢。(2013/12/13「コガネクモ」で紹介)
目立たないものが,急に身近になります。
広場には何度芝を張っても植樹をしても枯れてしまう区域があります。
地下水位が高く,湿性の植物が優占してしまいます。
千駄堀の原点を見るようです。
「千駄堀池」(公園の水を調整するための人工の池)で水鳥や植物を観察しました。
自然観察舎の入口で中間のまとめと後半の予定を確認します。
土日だけ開催される自然保護区域(自然生態園)での観察に参加しました。
自然生態園では専門のガイド(今回は直井宏さん)が説明してくれました。
25年ほど前まで、この付近は腰まで入るような泥深い田んぼでした。
木道に落ちているのは水鳥の糞。
水路に浮かぶ「鉄バクテリア」と「アオミドロ」。水中に「カダヤシ」も見えます。
指さしている先には「タヌキ」の巣穴があって,毎日出没するそうです。
木道には足跡がありました。
約30分の生態園での観察が終わり,野鳥観察エリアへ。
毎回「カワセミ」を見ることができたのですが,今日は残念でした。
撮影:海老原智康先生
海老原智康先生が観察舎の壁にいた地味な昆虫を紹介してくれました。
上は「キノカワガ」Blenina senex コブガ科。樹皮にとまっていると見分けがつかない。下は「ブドウトリバ」Nippoptilia vitis トリバガ科。幼虫は名前のようにブドウの害虫。
池のほとりにある「パークセンター」で掲示物や展示を見て回り,千駄堀のデータを収集します。レポート(ポスター形式)の資料としても利用しています。
学生たちは全国から来ているので,出身地の自然との比較が興味深い。直江祐君(左)は北海道から。
パークセンターを出て「みどりの里」に向かいます。
田んぼや畑、ハス田が残され家族連れでザリガニ釣りをする姿がみられます。
餌を探す「コサギ」。Egretta garzetta コウノトリ目サギ科。
魚,カエル,ザリガニなどをついばんでいる姿が見られます。
みどりの里の斜面林で樹種の違いや林床の植物を考えます。
(太平洋戦争中には燃料として「松根油」を採るため,この付近で松の根を堀ったのですが,その作業中に亡くなった学生がいるという話を聞いたことがあります。防空壕の跡も残っています)
斜面林を登り,「縄文の森」の広場で輪投げに興じる。
縄文海進の時代、この台地に生活の場があり眼下には東京湾の入り江が広がっていたはずです。千駄堀は古代から現代につながるタイムトンネルといえます。
貝の花貝塚(縄文中期〜晩期)を復元した竪穴(たてあな)住居に入ります。
解説員の方の説明を聞き,当時(約5,000年前)の自然と生活に想いをはせます。
内部は広く想像以上に快適だったかもしれません。
竪穴住居の前での集合写真。好天に恵まれ,11時45分に解散しました。
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終了後,隣接する「松戸市立博物館」で気になっていたものを体験しました。
縄文時代の編み物「アンギン」です。
土器に模様を付けたり,住居の中で敷いていたでしょう。
係りの人の指導を受けて,15分ほど編んでみました。
 その後,「千駄堀を守る会」の新年会に参加しました。
 2011年から実施した野外学習ですが,始めの数年間は「守る会」の皆さんに大変お世話になりました。植物,昆虫,クモ,鳥,キノコ等の専門家や自然観察指導員として活躍されているメンバーと1時間ほど歩いていただき、終了時の「まとめの会」も合同で行いました。ご協力いただき、ありがとうございました。
 現在のプログラムは松戸歯学部の学生たちとの試行錯誤の結果でもあります。

2017年1月7日土曜日

2017年正月ー富士・丹沢を見る

 2017年が始まりました。
空気がきれいなお正月期間は山を見るのに最適です。
グランドの向こうに雪をいただいた富士山が見えます。
その裾(すそ)をゴツゴツした低い壁が守ります。
丹沢(たんざわ)山地の山々です。
秩父山地と共に、関東平野を取り囲む大きな山系(関東山地)
を形成しています。
丹沢山地は神奈川県南西部に位置し,松戸歯学部からは富士山との間に入ります。
一番高い「蛭ヶ岳(ひるがたけ)」でも1,673m,古くから山岳信仰の対象となっている「大山(おおやま)」は1,252m,と高い山はありません。
撮影:2010年5月. 菜の花台から相模湾を望む
 都内からも近く手軽な山として親しまれていますが、丹沢山地は30以上の峰が複雑に入り組み,尾根道が狭く岩質がもろいので緊張する場所も多くあります。ヤマビル(Haemadipsa zeylanica japonica)も多く、気が付かないうちにソックスが真っ赤になることもあります。吸血するときに凝固阻害と痛みを感じない液を出すのです。
日没には富士・丹沢が一体となった黒いシルエットが浮かびます。
穏やかな一年になりますように。