2014年4月5日土曜日

ツクシ誰の子

春も本番になりました。ツクシも伸び上がって新入生を待っているようです。

ツクシはシダ植物トクサ科の「スギナ」の胞子をつくる生殖器官(胞子体)です。
Equisetum arvense L.
「はかま」と呼ばれる筒状のものは「葉」です。
ツクシは光合成をする本体(栄養体)のスギナより目立ちますが,胞子を飛ばすと枯れていきます。
スギナとツクシは地下茎(根ではない)でつながっています。
地下茎から新しい個体をつくる(栄養体生殖)能力が高いので雑草として嫌われることもあります。
 
ツクシの六角形のタイルの下には胞子嚢があって,緑色をした胞子を大量に抱えています。
 4本の「弾糸」というバネのような線維がはじけ,胞子が飛び出します。
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 シダ植物では胞子が発芽すると「前葉体」と呼ぶ「配偶子」をつくる体をつくりますが,スギナの前葉体はどんな形でしょう。次のシーズンに探してみましょう。
胞子を放出し終わったツクシ。




2014年4月1日火曜日

スズメの羽を学ぶ

 海老原智康先生(歯科総合診療学)からの投稿です。
3月のNature Seminar で鳥の羽が配られ,何の鳥か当ててみようというクイズがありました。
その解答でもあります。
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 大学構内の駐輪場付近を歩いていて、足元に鳥の羽が落ちているのを見つけました。
辺りを見回すと羽はあちこちに散らばっていて、集めてみると全部で30枚ほどありました。
通常野外において、1カ所でこれだけ多くの鳥の羽を拾う機会は滅多にありません。
羽の特徴から落とし主はスズメのようで、拾った羽をよく見ると、所々に血が付いていたり、軸が折れているのが見受けられることから、何らかの事故に遭遇した可能性があると考えられました。これは想像ですが、弱ったスズメがカラスやネコなどの肉食動物に襲われたのかも知れません。
せっかくの機会ですので、集めた羽を綺麗に洗い乾燥標本にしました。
実際に手にとって細部を観察すると、部位ごとの特徴がよくわかり勉強になります。

【スズメ/Passer montanus (スズメ目スズメ科)】
今回拾得した羽の部位を①~④に示します。

【① 初列風切(しょれつかざきり)】
【② 次列風切(じれつかぜきり)】
①②は、翼の最も外側に位置し、推進力を得るという飛行にとって重要な役割を果たす羽です。
【写真③ 体羽(たいう)】
身体全体に生えている比較的短い羽で、綿毛状の綿羽の割合が多いのが特徴です。
【写真④ 尾羽(おばね)】
<撮影データ>
日時:平成24年1月23日(木)
場所:学内駐輪場付近

2014年3月31日月曜日

ラッパ型のコケー地衣類

春到来。新入生を待ちます。
 中庭の針葉樹(カラマツ)植え込みの根元にも様々な植物が生活しています。
 ラッパのような形をしたコケが目にとまります。
 ハナゴケ科のヒメジョウゴケCladona humilis です。
しかしコケの仲間ではなく地衣類です。
地衣類は菌類と藻類が密接に関係して(共生)つくられた生物体です。
ラッパのようなものは皿状の「子器」で,菌類の「胞子」をつくる生殖器官です。
まわりの小さな葉状のものは地衣体です。
子器の縁には細かい球状の胞子がついています。 
 ピンセットではがして,ルーペで観てみます。
中に緑色の粒子が見えます。 
葉緑体のように見えます。
これが藻類が持つ葉緑体だとすると,粒子は胞子ではなくそれ自体がすでに地衣類になっている「粉芽」ではないでしょうか。粉芽は地衣体につくられる無性生殖器官です。
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胞子と粉芽のことは更に検討してみましょう。

2014年3月26日水曜日

ゾウを掘る・20次野尻湖発掘

3月21日から第20次野尻湖発掘(第1次は1962年)が10日間の日程で開始されました。
  野尻湖は妙高,黒姫,飯綱,斑尾の山々に囲まれた標高654mの天然の湖です。
湖底の地層は5万年から3万3千年程前に堆積し,大型哺乳動物(ナウマンゾウ,ヤベオオツノジカ)や石器・骨角器(人骨の産出はまだない)が産出します。
水力発電のために湖水が利用されていますが,冬の間は野尻湖に流入する川の水が減少し湖面が低下します。その時期,湖底発掘が可能になります。
発掘は除雪作業から始まりました。
ナウマンゾウの骨の一部。鑑定は哺乳類の専門班がおこないます。
ラベルが付けられ写真とともに記録されます。
化石の状態から骨が生(なま)の時に割られた可能性が指摘されました。
当時の人間との関係が想像され,人類考古班も加わります。
化石の堆積年代を決めるために地質の専門班が産出した地層を調べます。
4m x 4mmの発掘区画(グリッド)の壁は,地層を示す重要な役割を持ちます。
 時代の異なる火山の噴出物のは決め手の1つになります。鉱物組成が火山により異なります。(アオヒゲと呼ばれる火山灰層の拡大:中央の白い鉱物は雲母)
化石を記載する係は平面的な位置や標高,堆積状況を記録します。
全体の化石や遺物の分布,足跡の化石などの記録にはやぐらが組まれます。
T2と呼ばれる4万年程前の地層から発見されたナウマンゾウの肋骨。
化石を紙や線維で補強しながら周囲を石膏でかため,注意深く取上げます。
産出標本は野尻湖ナウマンゾウ博物館に保管され,その後の強化・クリーニングを経て研究に供されていきます。当時の古環境を知るために,植物化石,貝化石,昆虫化石,花粉・珪藻などの微化石,生活の跡を示す生痕化石,などの専門グループが共同し,氷河期の日本に関する総合研究になります。
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(*産出標本の写真使用は野尻湖発掘調査団の承認を得ています)

2014年3月15日土曜日

コンクリートの錆(さび)

オレンジや赤茶色の錆(さび)がついたようなコンクリートを見かけます。
建物や道路のかなりのコンクリートが同じようにさびています。
表面を薄く粉状の膜が覆って,少し大きい顆粒状のものが密集しています。
顆粒は丸いお椀(わん)状にみえます。スケールの間隔は0.2mm。
 これは菌類と藻類が共生した「地衣類」です。
ダイダイゴケの仲間でカロプラカ・フラボヴィレスケンス(Caloplaca flavovirescens: ダイダイゴケ属ダイダイキノリ科)。
お椀状のものは「子器」で,胞子をつくる子嚢が入っています。
 子器の断面を見ると,周囲の壁には緑色の藻類が入っているのがわかります。生存の基礎となる光合成をしています。
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コンクリートからは養分はとれません。地衣類は生き物のいないきびしい場所にパイオニアとして入り込み,植物遷移の最初の段階を形成する役割を今でも担っているのです。



2014年3月13日木曜日

春のキリギリス

 珍しいキリギリスの話題です。
海老原智康先生(歯科総合診療学)から投稿がありました。
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 朝方、駐輪場に停まっていた自転車のすぐ傍でシブイロカヤキリ/Xestophrys javanicus (バッタ目キリギリス科)という昆虫を発見しました。
見つけた時には、仰向けに倒れていて、左翅が折れ曲がった状態だったので、自転車などに衝突し弱ってしまったのではないかと思われます。
まだ春浅いこの季節にキリギリスの仲間(それも成虫)が見られるのは不思議に感じますが、関東周辺に生息している同グループのいくつかの種類は、成虫で越冬することが知られています。
本種は夜行性で、夜に活発に行動するため、冬眠から覚めて駐輪場の明かりに飛んで来たのかもしれません。

東北以南の広い地域に分布しているといわれますが、私が大学周辺で姿を確認したのは初めてのことです。

撮影日:平成26年3月7日(金)
 ①駐輪場とシブイロカヤキリ
(青丸で囲った中に虫が写っています。) 
②シブイロカヤキリ/Xestophrys javanicus(♂成虫)
前翅の付け根が太くなっていて、発音器官が認められるため雄と判断できます。

2014年2月10日月曜日

プレゼンテーション−口頭発表編

口頭発表は前期1回,後期1回が予定されています。
ひと月以上前から募集があり,テーマは自由です。
試験やレポートなどが忙しい時期と重なるので,応募には勇気がいるようです。
事前の打合せと進行状況を確認しながらスライドをつくっていきます。
発表当日(後期は2月6日)。
後期は5名,各テーマ20分程度ですが,大抵は最終の打合せよりも長くなります。
仕上げの段階で気合が入るのでしょう。
「雲について」は松野彩さん。
他の惑星で雲を見ることができるかなど,天文学の話題も取入れました。
「毒について」は樽川禅(しずか)さん。前期にも”毒キノコ”の発表をしています。
今回は動物が持っている毒について,鳥や哺乳類まで丹念に調べてまとめました。
清水佑一くんは「人体の組織について」。
かなり教科書的な内容ですが,特徴をわかりやすく説明してくれました。
鈴木花帆さんは「クチバシについて」。打合せなしの飛び入り状態で発表しました。
食性と形態の関係など面白い話でした。
阿久津眞奈さんは「四次元空間について」。
物理学の先生の指導を受けながらまとめていきました。
どうすれば三次元のイメージで理解できるか。
アニメーションを工夫した発表でした。
クラスメートの発表は内容からだけでなく,それ以上のインパクトがあるようです。
「応募をためらってしまったけど,やってみたかった」,ある学生のつぶやきでした。