2016年1月26日火曜日

坂川のオオバン

 大学の近くを流れる坂川には水鳥がやって来ます。
坂川の下流に松戸市街のビルを望みます。
ほぼ毎日目にするのは「カルガモ」です。
目を横切る太い過眼線でよくわかります。
カモ目カモ科 Anas zonorhyncha
近頃は黒い体に白い嘴(くちばし)を持つ「オオバン」を目にします。
カルガモより小さく,数も少ない。見かけない日もあります。
ツル目クイナ科 Fulica atra
カモのようですが,ツルの仲間です。
オオバンは冬になると北海道や東北地方から渡ってくることが知られています。
(一部は手賀沼で繁殖し,我孫子市の鳥になっています。)
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坂川も以前よりきれいになりましたが。。。。
鳥たちが飛来する環境が身近な場所ではヒトの生活が直接影響します。

2016年1月24日日曜日

冬の千駄堀:2015年度最終回

 今年度最後の千駄堀野外学習になりました。
9時15分,公園入口から出発します。
今日の湿地見学ではどんな発見があるのかな。
目立ったのは土のかたまり。木道のそばにいっぱいできています。
「モグラ塚」です。モグラが通路(トンネル)を地表近くで掘り進めたりで補修したりしたときの土と考えられます。
日本のモグラ4属7種は固有種で,東日本はほぼアズマモグラです。
「アズマモグラ」 トガリネズミ目 モグラ科  Mogera imaizumii
 実際の巣は木の根元などの深いところにあって,このトンネルは移動用,狩猟用の通路です。モグラは肉食の大食漢で主にミミズや昆虫を餌にしています。通常は植物の根を食べることはないようで,作物が食被害に遭うのはトンネルを借用したネズミの仕業ではないかとも考えられています(掘り起こしによる被害は大きい)。
縄文の森で竪穴住居での生活の説明を聞きました。
博物館には昔の生活をしのぶ道具が展示されていました。
千駄堀には腰までもぐるような深田がありましたので,「田下駄」(写真右下)も活躍したのではないでしょうか。
冬の千駄堀を満喫しました。
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どなたか,モグラを手に入れて骨格標本をつくりませんか。

2016年1月16日土曜日

有袋類の研究現場から

 有袋類のオポッサムを用いて歯の発生や顎の発生を調べ,有胎盤類との発生様式を比較しヒトを含む哺乳類の進化の歴史を描くプロジェクトを進めています。
ハイイロジネズミオポッサムMonodelphis domestica マウスより少し大きい程度
 金曜日(1/15)朝に松戸歯学部動物センターでオポッサムの出産(6頭)を確認しました。
2010年基礎歯科医学会発表画像
オポッサムは有袋類ですが袋(育児嚢)はありません。
産まれた子供は母親のお腹にはい登り,乳首をくわえて大きくなります。
新生児をその日のうちに東北大学大学院医学研究科のある仙台市に運びました。
共同研究者の若松義雄先生は,神経堤(しんけいてい)という頭部の構造(顎の骨や筋,歯など)をつくるユニークな細胞を専門に研究しています。
松戸から仙台までの移動の時間に実験の準備を整えます。
頭部は顎の発生実験に用い,胴部からは線維芽細胞を採取して神経堤細胞に戻す(リプログラミング)実験に供します。
モニターに写し出された作業の様子
 小さなピンセットとハサミを使って顕微鏡下で作業をします。
根気と集中力が求められます。
胴部から切出した組織をカミソリで細切します。
胴体の結合組織は細胞を分離する処理をします。
分離した細胞は遠心器で沈殿させます。
細胞をいくつかに分けて培養液を入れます。
細胞が増殖していけば,最終的には線維芽細胞の集団が残るはずです。
顕微鏡下で頭部から顎を切出します。写真は下顎です。
切出した下顎を培養液に浸します。
歯胚のできかたと顎の部位による遺伝子発現の違いを調べる実験に供します。
術者は若松義雄先生(共同研究者:東北大学)。
恒温器に培養液に入れた結合組織の細胞や下顎を収めます。
これからその動向を逐次観察します。
翌日,仙台市内は雪の朝を迎えました。
恒温器の実験試料はこの時点ではまずまずの状態でした。
新生児の一部は処理をして松戸歯学部に持ち帰り,形態や組織の研究に使います。
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実験の現場を紹介しましたが,研究の一部は学会発表や論文として公にしています。
しかし,有袋類の組織や個体の培養はまだまだ未知の部分が多く試行錯誤を繰り返している状態です。発生研究には大きな武器になります。
飼育・繁殖を含めて実験には根気とテクニックとアイディアが求められますが,オポッサムから新しい知見が得られることを期待してこれからも続けていきます。



2016年1月9日土曜日

明けましてー惑星接近

 2016年は元日からおだやかに始まりました。
ワンちゃんと一緒の早朝の散歩も寒さは感じませんでした。
 七草粥(かゆ)の朝,南東の空に細い月が弧を描き,その下にぽつんと明かりが見えました。
「明けの明星(金星)」ですが,ちょっと遅すぎたようです。
翌日(1/8)少し早めに出て星を待ちましたが,日の出まで雲は晴れませんでした。
1/9,5:45頃の南東の空。
月はなく,金星が輝いています。
よく見ると金星に接してもう一つ星があります。
土星です。

大接近の金星と土星,そして右下の赤い「アンタレス」。
これに月が加わった空を紹介したかったのですが,次の機会に。
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 アンタレスは「さそり座」の心臓にあたるといわれ,表面温度が低いので赤く見えます。しかし直径が太陽の700倍以上もあり,全天21個ある1等星のひとつです。



2015年12月21日月曜日

海牛に会いにー鳥羽水族館

 海牛の仲間(ジュゴン,マナティ)は日本からも化石が出ますし,沖縄にはジュゴンが3頭生息していることがわかっています。
 日本の水族館で飼育されているジュゴンは1頭のみ。鳥羽水族館で見てきました。
Dugong dugon 海牛目ジュゴン科ジュゴン属はこの1種のみです。
絶滅危惧種。
フィリピンから贈られた「セレナ」,指定30歳のメス。260cm, 379kg 。 
水槽の中で悠々と泳いでいます。
おだやかな微笑むような顔です。
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マナティはジュゴンと共通な先祖から別れた仲間と考えられ,淡水域に適応している。
「アフリカマナティ」 Trichechus senegalensis 海牛目マナティ科
魚やカメが一緒に泳ぐ水槽にいます。
動きがジュゴンと違ってユーモラスでした。
仰向けになって動きません。
寝ているのかどうか。。。。
ゆっくり体を横にして,
むっくりと起き上がりました。
泳ぎが遅いわけではないのですが,雰囲気があります。
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海生哺乳類の鰭脚(ききゃく)類も飼育されています。
「バイカルアザラシ」Phoca sibirica 食肉目アザラシ科
唯一の淡水性アザラシ。
透明度が高いバイカル湖で視覚を発達させました。
日本近海でもおなじみの「ゴマフアザラシ」Phoca largha 食肉目アザラシ科。
「イロワケイルカ」Cephalorhynchus commersonii 
クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科。
パンダイルカとも呼ばれます。
南アメリカ南端に生息し,非常に速い動きで泳ぎます。
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大型海生哺乳類の代表格,セイウチのショー。
食肉目セイウチ科 Odobenus rosmarus
500kg~1tになります。
オスは1mにもなる巨大な牙(きば)をもっています。主に貝類や甲殻類を食べているセイウチにとってどんな意味があるのでしょう。
臼歯は見たことがありますか?
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 水族館(動物園)のショー的な’展示’についての考え方も受けとめ方も様々です。昨年のイルカの追い込み漁の問題から派生したWAZA(世界水族館動物園協会)の通告は野生動物のありかたに一石を投じたものでした。
水族館は研究,教育,保護についても大きな役割を持っています。


2015年12月7日月曜日

多幸の島ー日間賀島・三河湾

離島を旅してきました。
愛知県南知多町にある日間賀島(ひまかじま)。
名古屋から名鉄で約1時間の河和(こうわ)からフェリーに乗り,約20分です。
島の近くの縞々模様の岩礁。砂岩・泥岩・凝灰岩が互層になった師崎(もろさき)層です。
 到着の東港に近づきました。師崎層の露頭が見えます。
港では蛸壺が出迎えます。
日間賀島はタコ漁で有名です。タコにまつわる言伝えもいっぱいあり,正月3ヶ日はタコ祭りで祝うそうです。
島の資料館にはタコ漁の様々な漁具が展示されています。タコ漁が盛んな1950年代までは「釣り」が主流でした。
もちろんタコ料理。手際よくさばいていきます。脚は8本,Octopusの'oct'は8の意味です。
頭のように見えるのが胴です。中には鰓(エラ)があり,内臓が詰まっています。発達した目(単眼)を持つ頭は胴と脚の境にあります。口は足の付け根にあります。
脚が頭から出ているので,タコやイカの仲間を「頭足類(綱)」(Cephalopoda: cephalo=頭,poda=脚)と呼びます。
安楽寺の章魚(タコ)阿弥陀如来。
大昔,大地震によって近くの島が陥没しお寺の仏像も沈んでしまった。しかし,その後網にかかって仏像が引き上げられた時,一匹のオオダコが守るように絡み付いていた,と伝えられています。
島の中を歩くと石垣が目につきます。多くは島の崖に見られるような柔らかめの石ですが,所どころに固い花コウ岩(みかげ石)が挟まっています。花コウ岩は日間賀島にはなく隣の篠島(しのじま)から産出します。
上は知多半島。右が日間賀島,下が篠島。島間の距離は2km。南知多町ホームページから。
日間賀島には1,800万年程前の砂岩・泥岩・凝灰岩が互層になった地層が現れていて,篠島には非常に古い8,000万年前の花崗岩が露出しています。この硬い岩石は名古屋城の石垣にも使われました。日間賀島と篠島は2kmほどしか離れていませんが,静かな海の下には大きく異なった岩石をのぞかせるような激しい地殻変動が隠されているのでしょう。
 「タコ阿弥陀如来の伝説」の島が沈むような大地震は巨大な地殻変動を意味しているのかも知れません。
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中央構造線博物館ホームページから
渥美半島付近は関東から九州に延びる巨大な断層帯である「中央構造線」が通っています。日間賀島と篠島は共に内帯の領家(りょうけ)変成帯になりますが,断層をつくる大きなエネルギーが三河湾の海底にもかかっていたのでしょう。