2015年8月17日月曜日

ソウギョ(Grass Carp)と野尻湖ー生態系をのぞく

 お盆明け,野尻湖発掘調査団・哺乳類グループとして化石の調査・記載をしていました。
昨年3月,この付近は湖面が低下し第20次野尻湖発掘の現場でした。
今は観光客や釣り客でにぎわっています。
不思議なことに,湖畔で水草を見ることはありません。
野尻湖ナウマンゾウ博物館にソウギョ(草魚)が2頭,運び込まれていました。
体長は1m近くあり,体重は10kgを越える大物です(内臓は調査のため摘出)。
水草が見られない原因はこのソウギョです。
ソウギョCtenopharyngodon idellusは中国原産のコイ科の大型淡水魚です。
上下顎には歯がありませんが,のどの奥に咽頭歯を持っています。
ソウギョは毎日自分の体重と同じ量の水草を食べるといわれています。
 1970年代,生活排水が増加し湖は富栄養化しました。水草は繁茂して船にからみ付いたり悪臭の原因になりました。対策として,1978年5,000匹のソウギョを放流しました。
3年も経つとで水草は食べ尽くされ,産卵や住む場所を失った魚や小動物たちが消えました。1984年頃にはブラックバスやブルーギルが入り込み,ワカサギ等が減少しました。1988年,プランクトンの大発生による「淡水赤潮」に見舞われました。野尻湖の生態系は大きく変化していました。
(展示写真)
地元の人たちは野尻湖の自然を取り戻すために立上がりました。
野尻湖水草復元研究会がつくられ,博物館や小学校も活動を始めました。
人間が柵で保護地域を作り水草を守ります。
(展示写真)
ソウギョが侵入するとあっという間に草がなくなります。
用心深いため捕獲はなかなか難しく,2人がかりになることも。
(展示写真)
水草の回復には時間がかかります。地下茎からヒメガマが出てきた様子。
水中にもケージを置いて水草を守ります。小さなエビ等に食べられてしまうことも。
水草復元研究会から
ホシツリモ Nitellopsis obtusa(車軸藻類)という大変貴重な水草も絶滅しましたが,大阪医大に保存(1974年)されていることを知り,1995年から復元に取組んでいます。
ソウギョの放流から37年。自然を取り戻すことはこんなにも大変なことなのです。
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ソウギョの鱗(うろこ)とその拡大 。
骨鱗(硬骨魚の鱗)のうち,突起のある「櫛鱗(しつりん)」であることが分かります。

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