2015年5月25日月曜日

中庭・花壇

 松戸歯学部も初夏の訪れを感じます。
中庭に一面の黄色い花。
地面に広がる葉(ロゼット)の間からひょろひょろと花茎が伸びやかです。
「ブタナ」です。
「タンポポモドキ」とも呼ばれ,1930年代に帰化しました。
キク科 エゾコウゾリナ属 Hypochaeris radicata 
白い綿毛が密生した茎を伸ばし,地味な花をつけた植物も目につきます。
「ウラジロチチコグサ」です。
キク科 ウスベニチチコグサ属 Gamochaeta coarctata
「チチコグサ」や「ハハコグサ」よりも大柄です。
花弁は広がらず,傘を広げたパラシュートのような冠毛が種子をつけて花のまわりに球状にふくらみます。風に乗って一斉に飛散します。
冠毛はがくが変形したものです。
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この日の午後,全てがきれいに刈り取られていました。


2015年5月24日日曜日

よく似たヒナゲシの花

 野外実習・千駄堀でも話題になりましたのでコメントします。
春になると大学の構内でも,道ばたでも目につくヒナゲシのような花があります。
「貧乏草」(?)などと呼ばれたこともありますが,よく似た2種類の植物です。
これはヒメジョオン(姫女苑)です。
花は多数の小さい花の集合で,中央の黄色い部分が
「筒状花」,周りの白い花が「舌状花」です。
よく似たハルジオン(春紫苑)は開花のピークは過ぎました。
よく使われる区別の方法は茎が中空か詰まっているかを見ることです。
白い髄がつまっているのがヒメジョオン(左),ハルシオンは中空です。 
茎を折らなくても葉の付きかたを比べるとわかります。
ハルジオン(右)は茎をぐるりと抱え込みます。
舌状花の花弁の幅はヒメジョオン(左)が広いですね。
ハルジオン(右)の花弁は先がピンクに染まることが多い。
舌状花を一枚,抜き取って比較すると,
ハルジオン(右)は子房の上に細い毛のような「冠毛」のあります。
冠毛はタンポポの綿毛のようになります。
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ともに北アメリカ原産のキク科の外来種で
ヒメジョオンErigeron annuus (L.) Pers.は江戸時代末に,ハルジオンErigeron philadelphicus Lは大正時代に,観賞用として渡来して全国に広がり野生化しました。
Which is which?



野外実習・千駄堀 第2回

参加者26名。初夏の千駄堀を歩きました。
公園中央口で。
観察の目的やコースの説明のあと,出発します。
まず,アリジゴク探し。今回は珍しく捕獲なし。
(楠瀬先生があとで見せてくれましたが)
千駄堀をうるおしていた湧水の場所を確認。
東屋に網をはった,数種のクモを観察。
初めて聞くクモの話。
この場所は何をしても水が引かない。他との植物の違いを見る。
人工の池でミストに歓声を上げる。
パークセンターの見学の後,解説員の室 紀行さんが野外を案内してくれました。
調査用の網で昆虫すくい説明してくれました(上)。
ハス田の前で植物の根の説明(下)。
斜面林で林床の植物と高木との光の取り合いや,もとからある樹木と植林された杉との関係を考えます。
シラカシの大木が繁る一帯。
千駄堀の縄文時代の面影(おもかげ)を残しているのでしょう。
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千駄堀は自然を仲立ちにした人との出会いも楽しいのです。






2015年5月23日土曜日

水族館ー新入生歓迎会

 天候に恵まれた,新入生歓迎会。
1,2年次生が葛西臨海公園に集まります。
サメにはいつも気になります。悠々と泳ぐシュモクザメ。独特の風貌とサメ特有のエラ。
サメの歯や皮に触れるコーナーもありました。
じっくり見せてもらいましょう。
モミジザメの肌をルーペでみると。
楯鱗(じゅんりん)の名にふさわしい。
象牙質の表面をエナメロイド(エナメル質と同様の物質)が覆い,
皮歯(ひし)ともいいます。
クロトガリザメの顎を内側からのぞく。
歯がきれいに格納され,順次に歯が補充される車軸(車輪)交換がわかる。
ネコザメの顎。整列したスペアの歯。
顎の後方では四角い枕のような歯に変っている(側面観)。
何をどんなふうに食べているのでしょう。
「サザエ割り」の別名を持ちます。
和名:眼の上の突起がネコの耳に見える。
学名:Heterodontus japonicus 
属名は形の違う歯を持つことから,種名は日本近海に生息することから。
子供たちと一緒に楯鱗の感触を楽しみました。
マグロの謎の絶滅は残念ですが,
多様な生き物が住む水族館は不思議な空間です。

2015年5月9日土曜日

石炭と化石

 化石ゾウの調査のため,福島県いわき市常磐湯本町の「いわき市石炭・化石館」をたずねました。
入口に首長竜のモニュメントと後には石炭坑道に降りるエレベーターがそびえています。
やはり,フタバスズキリュウが出迎えます。
1968年,高校2年生の鈴木直さんの発見は日本の恐竜研究を大きく発展させました。
全長6.5mのエラスモサウルス類。
正式に新種のフタバサウルス Futabasaurus suzukii となったのは2006年のことです。
Palaeontology.vol.49,467-484,(2006)の論文に記載された頭蓋と歯の写真。
8,500万年前の地層から産出しました①。
イワキクジラなどの大型海生哺乳類も発見されています。
1980年発見のイワキゾウ(ステゴロフォドンという仲間)。
1,700万年前の化石です(いつもは実物を展示)。
この発見でステゴロフォドンの下顎には牙があることがわかりました。
現在は福島県の天然記念物に指定されています。
イワキゾウの実物標本を調べる共同研究者の飯泉克典さん(茨城大学・大学院生)。
咬耗の微細な跡から顎の動きを解析します。
未萌出の乳臼歯も展示され,発生学的にも興味はつきません。
エレベーターで地下の坑道に降りると採掘の歴史を復元した展示や解説があります。(上は家族で掘っていた明治時代の様子。下は1960年代,機械化された採掘現場)。
大量の温水が噴き出す高温で難しい炭鉱でした。
1976年には全ての炭鉱が閉山しました。映画「フラガール」(2006年)は当時の状況を伝えています。
外の公園に展示されている,いわき市付近の岩石。
常磐炭田は3,300万年前の地層(常磐夾(きょう)炭層)にあり②,海に向かって傾斜しているため,この付近では600m以上も深い坑道になりました。
湯本駅前。笛を吹く少女の隣で帰りの電車を待ちました。
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①中生代白亜紀後期 双葉層群玉山層
多数のサメの歯も産出しました。
②新生代第三紀始新世 白水層群石城層下部
石炭の元になったのは現生に近い被子植物です。






2015年5月5日火曜日

こどもの日にナウマンゾウと

 5月4−5日,20次野尻湖発掘(2014年3月)の哺乳類専門班・研究合宿に参加しました。
ゴールデンウィークの野尻湖ナウマンゾウ博物館は入館者でにぎわい,4日は1,000人を超えました。
本物のアジアゾウの骨にさわる子供達の真剣な眼。
説明する学芸員の関さん。
(ドアの向こうで産出遺物のクリーニング作業中)
ナウマンゾウの下顎大臼歯。
周囲に固着した土を除去し,破片を付けていきます。
オオツノジカの脚の骨。
大事な発見時の状態が石膏の台で保存されています。
なぜこのような産状なのか,ヒトの手が加わった可能性はあるのか。
専門グループの議論が白熱します。
討論と打合せ後はなごやかに集合。
200頭以上のシカの頭蓋骨を所有し研究している高校生や現役の歯科医もメンバーです。(年齢だけは私が一番です)
雪の残る妙高山。
野尻湖に眠る化石群は日本列島の生物相の変遷を解明する貴重な情報を提供しています。