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2017年8月21日月曜日

リニューアルを待つー野尻湖ナウマンゾウ博物館

 今年も宿題を抱えて野尻湖発掘調査団・哺乳類グループの合宿調査にやってきました。
お盆を過ぎても「野尻湖ナウマンゾウ博物館」
は盛況でした。
発掘遺物は収蔵庫に整理・保管されています。
博物館の外の作業場では「昆虫化石を探す」イベント。大人も子供も真剣でした。
翌日は「ゾウに触る」イベントも。大きさに驚きます。
学芸員は調査のかたわら,大忙しです。
野尻湖発掘調査団所蔵
私の仕事はオオツノジカ上腕骨の記載です。
長い間隔を置いて発見された遺物が,年を超えてつなぎ合わされました。
論文の完成に向けた,
合宿調査のメンバー(8/21当日)
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博物館入口の向かいにそびえる2本の「ドイツトウヒ(ヨーロッパトウヒ)」
Picea abies マツ科 トウヒ属
柱時計の振り子風の球果(松ぼっくり)(左のスケールは1cm目盛)
「オニグルミ」
Juglans mandshurica var. sachalinensis クルミ科クルミ属
「キボシカミキリ」
Psacothea hilaris カミキリムシ科
「黒姫山」にもようやく夏の雲が戻りました。
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博物館は合宿調査の後,改修工事に入りました。
来年3月20日のリニューラルオープンを楽しみにしましょう。


2017年5月22日月曜日

南海の白い壁−琉球石灰岩

 久しぶりの沖縄,琉球石灰岩の壁が懐かしく感じられます。
梅雨空の那覇空港。白い壁が出迎えます。
太古の生き物がつくった石灰岩の壁。海の匂いがするようです。

空港から北に50km, 恩納(おんな)村の「万座毛(まんざもう)」は東シナ海に面した石灰岩の平らな台地。標高18m。突端が象の鼻に似ているのがユーモラスです。
「万座毛」は,万人も座する草原(毛)と説明されています。
「アダン」の赤い果実が目を引きます。
タコノキ科タコノキ属 Pandanus odoratissimus
野生の「コウライシバ」と周囲の植物群落は県指定の天然記念物です。
GoogleMapから
石灰岩は透水性のために川ができません。平坦な台地は侵食を受けないので崖になって終わります。
周囲の岩は海水と波の浸食で崩落し,波食台が広がって行きます。
「夫婦岩」と呼ばれる石灰岩の岩礁もいつか海底に転がり落ちそうです。
オーシャンタワーから古宇利大橋(1,960m)をのぞむ。
さらに北上して,今帰仁(なきじん)村の「古宇利島(こうりじま)」に来ました。
GoogleMapより
面積3.13km²,周囲7.9kmでほぼ円形の形をした島で3〜4段の海岸段丘が見て取れます。島の標高は107mです。
オーシャンタワーの駐車場の岩を見てみると明らかにサンゴの石灰岩であることがわかります。
これは貝殻の断面でしょうか。結晶の配列のように見えます。
琉球石灰岩といえばグスクの城壁です。
2000年に世界遺産に登録された「琉球王国のグスク及び関連遺跡群」の一つ,読谷(よみたん)村の座喜味(ざきみ)城。
重厚なアーチの門。地形に沿った曲線の城壁。
首里城(那覇市)の園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)も世界遺産です。琉球石灰岩の代表的な建造物です。
門の後ろに本殿はなく,うっそうと広がる森林がそれにあたります。まさに神に続く門です。
首里城正殿内の書院。石灰岩に松を配し
海を望む庭園があります。
首里城内の井戸の一つ,「龍樋(りゅうひ)」。
琉球石灰岩は水を通してしまうため生活用水の確保は大変でした。石灰岩層の下の島尻層(泥岩の層)は不透水層で,ここを流れる地下水を引いて井戸にしました。首里城の標高は136mで井戸は120m付近です。ここが層の境界(不整合面)にあたります。
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琉球石灰岩の堆積時期は170万年前頃からと考えられます(多産するのは100万年〜 50万年前)。琉球列島の形成に関わる地殻変動と世界的な海水面変動によって海面下50m~100mで形成されるサンゴ礁が堆積し,地上に姿を現しました。(珊瑚)礁性石灰岩は生物と地質のつながりを探る鍵ともいえます。

2017年5月7日日曜日

黄砂と地球磁場逆転ー野尻湖から

 ゴールデン・ウィークの最後に野尻湖発掘調査団の哺乳類グループ集会に参加しました。オオツノジカ化石の上腕骨を論文にする課題があります。
7日の朝,妙高山はいつもよりかすんで見えました。
周りの空気も透明感がないような気がします。
気象庁のHPから
数日前から予想されていた「黄砂」です。
4,5日に北京周辺で猛威を振るった黄砂は,関東地方を含めて広い範囲に影響が懸念されていました。
野尻湖ナウマンゾウ博物館に届いた6日の夕刊に,「チバニアン」の記事が1面トップで掲載されていました。
地球の磁場(N極とS極)が逆転する現象が地球の歴史の中で何度も確認されています。その一つが千葉県市原市の養老渓谷の地層「千葉セクション」に刻まれている証拠が固まり,重要な地層境界の「国際標準模式地」として申請するという記事です。
なぜ長野の新聞のトップ記事に?
国際年代層序表では,左上の0.781(78万年前)のところにはピンが打ってありません。
「更新世中期」となっていますが,ここに日本の地名「チバニアン」を冠しようというものです。実際に青銅製の「ゴールデン・スパイク」が地層に打ち込まれます。
小湊鉄道のHPから。磁気逆転層の写真。
境界を決定する重要な「鍵層」になったのが写真の「Byk-E」(白尾(びゃくび)層)の数cm幅の「火山灰層」です。
その中の成分やウラン(U)と鉛(Pb)の存在比を高精度で分析し,77万年前に噴火した長野県の「御嶽山(おんたけさん)」から飛んできて降り積もった火山灰であることを確実にしました。
GoogleMapから
御嶽山から250kmも離れた養老渓谷の地層に火山灰を運んだのは,中央アジアの砂塵を巻上げて日本の空に黄砂をもたらす強い風「偏西風」でした。
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今回は野尻湖発掘調査団の人類考古グループと同時期の集会でした。
 人骨という直接の証拠はまだありませんが,野尻湖人の姿と生活を追いかけています。
 オオツノジカの同じ部位も人類考古の目で調べます。
化石は地質学的背景を含めて多面的に解明されていきます。


2016年6月3日金曜日

Holotype (完模式標本)に会う-オーストラリア博物館・シドニー

 6月2日,西海岸のパースから東海岸のシドニーへの移動です。
    直線距離でおよそ4,800km,飛行機で約5時間。
Googleより。
主な訪問地:アデレード,パース,シドニー,メルボルン,カンガルー島。
国内の時差が2時間あるので昼の出発で到着は夜になりました。
最初の滞在場所,ワールドスクウェア付近のにぎわい。
翌3日朝,オーストラリア博物館を訪れました。
ハイド・パークに隣接する,クラシックとモダンが融合したような建物です。
古生物学の収蔵庫に案内されると,
史上最大の有袋類,ディプロトドンDiprotodon optatum の頭蓋化石が置いてありました。
今回お世話になったコレクションマネージャーのRoss Pogson 氏(専門は鉱物学)。 
さっそく,展示室のディプロトドン(背景の復元像)を案内してくださいました。
約200万年前から25,000年前まで生息していた,現在のウォンバットやコアラの仲間です。
オーストラリア博物館所蔵
ディプロトドンの臼歯は草食動物の特徴を持ち,歯冠はセメント質で覆われていました
拡大して他の動物との類似点や相違点を探します。
その日の終了近く,Pogson氏は鍵付きの収蔵庫に案内してくれました。
この区域には普段は目にすることができない特別の標本があります。
貴重な,ホロタイプ(holotype:完模式標本)が収蔵されています。
ホロタイプは動物の学名を登録するための基準になった標本(通常はタイプ標本と呼ぶ)で世界に一つしかありません。

そのひとつ,Diprotodon australisのタイプ標本,そしてその時の論文です。
<現在は Diprotodon optatum にまとめられています>
オーストラリア博物館には哺乳類を含む膨大な数のタイプ標本が収められていました。
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半月の滞在で有袋類が身近に思えるようになってきました。
パラレルワールドを見るような気持ちは残っていますが,有袋類がこのまま地球上に存在できる環境を具体的に考える必要を感じています。
ハイド・パークから眺めたオーストラリア博物館。