2014年12月27日土曜日

ナウマンゾウ・パズル

 暮れの12月26日から28日にかけて野尻湖へ。
例年にない大雪で,頻繁に除雪車が出ています。
3月の野尻湖発掘で産出した化石の整理・同定作業を
野尻湖ナウマンゾウ博物館で行いました。(哺乳類グループ:加藤禎夫さん)
骨片ごとに動物の種類を調べ,部位を決めていきます。
この3つはナウマンゾウとわかりました。
 
部位を決めるには博物館の展示室や収蔵庫の化石と見くらべます。
上は四肢骨と肋骨,下は頭蓋骨です。
解剖の本を調べ試行錯誤を繰り返した結果,肩甲骨が浮かびます。
収蔵庫にある現生のアジアゾウ標本(動物園で亡くなった個体)。
ひと抱えもある肩甲骨(左)を運び出します。
遺物番号20NIC4-43は,左肩甲骨・肩甲切痕の肩甲頸から棘上窩にかけての部位であることが判明しました。
作業後の哺乳類ゼミ。
今夜は有袋類のテーマで発表しました。
少々ナウマンゾウに疲れましたので,楽しんでいただけたようです。

2014年12月25日木曜日

NatureSeminar 9 - LAの生き物たち-

クリスマスの晩,第9回のネイチャー・セミナーを開きました。
レポーターは木場先生(口腔病理学)。
LAはルイジアナ州のことでした。
 留学中に観察した野鳥が中心でしたが,本当に多くの種類を見せていただきました。
最後にご自宅に集まる動物の紹介も。
アメリカでの生活にも質問がおよび,終始なごやかなセミナーになりました。

2014年12月6日土曜日

越冬の繭(まゆ)はどこ

  師走に入り,いよいよ冬の雰囲気です。
夏の名残り,セミの抜け殻。
サクラの木に小さな卵の殻のようなものがいくつも付いていました。
これはイラガの仲間の繭(まゆ)です。
色が似ているので樹皮の一部のようにみえます。
幼虫が繭をつくりその中で蛹(さなぎ)で冬を過ごすと考えられています。
しかし,少し歩き回った限りでは穴の開いた繭ばかり。
成虫になって出て行ったものだけでした。
殻の中に何かが見えています。
スケールは1mm
樹皮からはがして裏返すと蛹の一部が残っていました。
クモの巣が掛かかり,黒い虫がみえています。
蛹の腹部です。脱皮する前に食べられたようです。
誰が食べたのでしょう。
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この繭は「ヒロヘリアオイラガ」,
Parasa lepida (チョウ目イラガ科)のものです。
1920年代に南方から侵入した外来種で,1960年代から関東に広がったようです。
幼虫と成虫は見つけたら紹介しましょう。
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気になる黒い虫は
数日後,同じ場所で死んでいました。脚は6本。
このクモの巣の持ち主ではないようです。

2014年11月27日木曜日

幻のクモ・ナゲナワグモーNatureSeminarNo.8

 幻のクモと呼ばれる「投げ縄グモ(ナゲナワグモ)」を主賓に,クモ学への招待となるセミナーでした。
レポーターは楠瀬隆生先生(生物学)。
 イントロダクションでは糸をつくるの体のつくり,面白い習性,網を張らない仲間などクモの世界の多様性が紹介されました。
 投げ縄グモの話題になり,粘球をつけた糸(投げ縄)の正体は何か,フェロモン臭を利用してオスのガをとるらしい,など興味深い話が続きます。
そして,いよいよ今回の発見が紹介されました。


これが貴重な日本の投げ縄グモ「ムツトゲイセキグモ」。
コガネグモ科 Ordgarius sexspinosus
南方系で体長は1.2cmほどの小さなクモ。昼間は葉の裏などでじっと動かず餌は夜にとるので発見が難しい。
発見者は海老原智康先生(総合歯科診療学)。「これは......!」と楠瀬隆生先生の所へ持ち込み,調べた結果「やはり........!」と判断されたそうです。
発表後も質問は続き,楽しいデスカッションになりました。
クモの世界は奥が深く,次の機会も期待できます。

2014年11月13日木曜日

比較動物学実習ー湘南キャンパスにて

 今年は「歯の比較解剖」を,藤沢市の生物資源科学部で行うことにしました。付属の博物館の利用も含めて「比較動物学」実習としました。
学生数7,000名に各種の施設を持つ広大なキャンパス。
9:30,正門横の博物館前に集合。
2班に分かれて博物館と解剖室で実習を行い,昼食をはさんで交代します。
 
博物館では五味浩司教授(獣医解剖学)に動物の骨格について懇切丁寧な解説をしていただきました。
 思い思いの動物の前で,全身骨格と頭頚部のスケッチを始めます。
 クジラ,ゾウ,キリン等の大型哺乳類の骨格がこれほど間近に観察できることに驚きます。多様な動物を前に実習プログラムが浮かんできます。
解剖室では安井禎先生(獣医解剖学)のご指導で頭蓋および歯の勉強をします。
 大型動物も扱う実習室にはクレーンが下がり,冷凍室にはウマ,ウシ,ブタが整理されています。
 
実物のもつインパクトがスケッチにも あらわれます。
大きな視点からヒトの歯そしてそれを支える骨組みの理解が得られる事を期待します。
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 今回,湘南キャンパスでの実習はいかがでしたか。野外観察(千駄堀)とともに,環境を変えた体ごとの実習には意味と効果を感じています。
獣医解剖学教室の先生方には,これまでも頭蓋骨をお借りするなど大変お世話になっています。心より感謝いたします。



2014年11月11日火曜日

ホリカワクシヒゲガガンボを発見〈晩秋の虫たち②〉

海老原智康先生(歯科総合診療学)からの投稿を紹介します。
11月7日に引き続いての投稿,ありがとうございます。
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発見日:平成26年11月11日(火)
校舎棟2階の廊下の外壁(第一会議室付近・教職員駐車場側)にホリカワクシヒゲガガンボ(双翅目ガガンボ科)がいるのを発見しました。
よく見ると、身体にはクモの糸が纏わりつき、すでに絶命しているようでした。
しかし、体色変化も殆ど無く、かなり良い状態に保たれていたため、死亡したのは比較的最近ではないかと推測されました。
本種は大学周辺の草地などで稀に見ることがありますが、構内で発見したのは初めてのことです。
一般的にガガンボというと、淡黄色~淡褐色の地味な色彩で、蚊を大きくして脚を引き伸ばしたような弱々しい姿をしています。
しかし、本種は脚が太短く、色彩も鮮やかで、一見ハチのようにも見えます。確かに飛翔中の本種を見ると、ある種のハチによく似ています。
もちろん、ハチに似ているというだけで、毒針も無ければ人を襲うこともありませんが、こうしてハチに擬態することで、捕食者から自分の身を守っているのではないかと考えられます。
なお、本種の♂には“クシヒゲ”という名の通り、櫛状の立派な触角がありますが、この個体の頭部には“クシヒゲ”が見当たりませんので、どうやら♀のようです。
♂については、1年次生の千駄堀自然観察会でも利用している『21世紀の森と広場』で撮影した写真がありますので、参考としてそちらを掲載いたします。
 ・ホリカワクシヒゲガガンボ発見場所
 ・ホリカワクシヒゲガガンボ(♀)
・ホリカワクシヒゲガガンボ(♂)/2014.6.1 松戸市千駄堀

2014年11月7日金曜日

アカタテハを採集〈晩秋の虫たち①〉

海老原智康先生(歯科総合診療学)からの投稿を紹介します。
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採集日:平成26年11月7日(金)
出勤時、校舎棟1階の通路(駐輪場、中庭に通じるガラス壁の廊下)の床にアカタテハ(チョウ目タテハチョウ科)が静止しているのを見つけました。
アカタテハは稀に中庭を飛翔する姿が見られますが、高空を非常に素早く飛ぶため、容易に観察できるようなチョウではありません。
今回は、どのような経緯で建物内に迷い込んだかは分かりませんが、朝の低温で活動が鈍っていたため、比較的簡単に採集することができました。
本種は大学周辺においても、あまり個体数の多い種類ではありませんが、それでも年間を通じて姿を見ることは可能です。
春には街路樹や公園の桜並みに花の蜜を求めて飛来したり、秋には人家の庭先に成るカキの実の汁を吸いに来ることがあります
サクラの花もカキの実も大学構内にはあるので、シーズンになったら本種を探してみるのも面白いかも知れませんね
・アカタテハ発見場所
・アカタテハ1(翅を閉じたところ)
・アカタテハ2(翅を開いたところ)

2014年10月26日日曜日

電顕週間

 今週(10/23~26)は電子顕微鏡が忙しい。
 10月23日木,電子顕微鏡講習会1日目。
学内の先生方が電顕を使用した研究例をレクチャーします。
大学院生は電子顕微鏡学の科目になります。
2日目(24日金),電顕の操作技術と試料作製を学びます。
走査型電顕(SEM)用の試料を作製中です(髪の毛を観察します)。
 試料を電顕の中に挿入します。真空を保つ手順に緊張します。
試料がディスプレイに現れました。目的の部位に焦点を合わせ,
デジタル画像を保存してひと区切りです。
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 透過型電子顕微鏡はガラスナイフの作製から入ります。
鋭いエッジを割りとり,試料を載せるテープを貼ります。
 ウルトラミクロトームにガラスナイフをセットして
試料を1/1000ミリメートルの厚さに切っていきます(セミシン)。
切った試料は小さなグリッド(網)に載せ,透過電顕に挿入します。
電子線を操作し蛍光板に現れる像を観察します。
焦点を合わせ高倍率の写真をフィルムに撮って,ひと区切りです。
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松戸祭(10/25,26土・日)は電子顕微鏡を一般公開します。
小さな子どもさんにも機械だけでなく試料の作り方も説明しています。
学部生には簡単な操作をしてもらい,研究の面白さを知ってもらいます。
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電顕委員の皆さん,連日の活躍に感謝いたします。
電顕をよりいっそう活用していただけるよう期待しましょう。