2016年6月8日水曜日

単孔類とワラビーを間近にータロンガ動物園(Taronga Zoo)

サーキュラー・キーからフェリーで15分ほど,ポート・ジャクソン湾の対岸にオーストラリア有数の規模を誇るタロンガ動物園があります。
フェリーを降りるとロープーウェイに乗れます。タロンガはアボリジニ語で”美しい水の眺め”という意味ですが,シドニー市街を望むとなるほどと思います。
地図の右上に港があり,ロープーウェイで左下の入口まで登ります。
高低差のある29haの敷地に380種2200頭を展示する大規模な動物園です。
私の関心はオーストラリア区域の動物が中心になりますが,アフリカやアジア区域の動物も大きな割合を占め,子供たちの歓声があがります。

ハリモグラが動いているのを見るのは初めてでした。
Echidna : Tachyglossus aculeatu
夜行性の動物舎,径30−40cmに丸まった針のかたまりが予想以上に活発でした。
オーストラリア全土に生息し,アリやシロアリを食べています。
特別舎の水槽で待つこと30分,カモノハシが姿を現しました。
Platypus :Ornithorhynchus anatinus
体長50-60cm,水かきのある前肢を活発に動かして素早く泳ぎます(追いかけながら撮影しました)。オーストラリアの東部に生息し,昆虫や水性の小動物を食べています。オスの後ろ足の爪からは小さな動物は死に至るほどの毒が出されます。
卵を産む哺乳類・単孔類の現存する2種類を間近に観察できたことは大変な収穫でした。
ぜひ会いたかったイワワラビーの仲間。
オグロイワワラビーBrush tailed Rock-wallabyを近距離で観察できました。
Petrogale penicillata
体長50〜60cm, 尾長も同じくらい。体重5〜10kg。
岩場の生活に適して足の裏は滑り止めのパット状になっています。
こちらはオグロワラビー。名前は似ていますが深い茂みや湿った土地に住む仲間です。
Swamp Wallaby:Wallabia bicolor
体長,体重ともオグロイワワラビーよりやや大きい。
アカクビワラビー。疎林や灌木地に生息します。
Red necked wallaby:Macropus rufogriseus
体長約80cm,体重25−20kg
説明板にカンガルーとワラビーの違いが載っています。
今回,様々なワラビーをじっくりと見る事ができ,一層の親近感が生まれました。
タロンガ動物園には,係員が同行してコアラを間近に見ることができる区域があります(別料金)。
しかし,ニュー・サウス・ウェールズ州(シドニーが州都)の規則で,コアラに触ることはできません。一日のほとんどを寝て暮らすコアラにとって,触られたり動かされたりするのはかなりのストレスなのだそうです。それを知っているのか,本当にすぐそばでコアラが眠っています。
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Vivid Sydney 
シドニー湾は幻想的な光のアートに彩られました。
タロンガの動物たちにはどのように見えるのだろうと,船上からの眺めを堪能しながら考えました。

2016年6月7日火曜日

シドニー,歴史の街


 週末のシドニーはテレビでも被害が報道されるほどの悪天候でした。
シドニーの温暖湿潤気候はアデレードやパースの地中海気候とは違った肌感覚があります。
ワールドスクエアー付近のゲリラ的な豪雨。
クイーン・ビクトリア・ビル(1898年完成)。
大規模なショッピングモールになっています。
ピット通りを北上してシドニー湾のサーキュラー・キー(Circular Quay:観光船等の船着場。オペラ・ハウスがあります)に向かいます。
市街はかなりの起伏があり,複雑な地形を反映しています。
シドニー湾西側に架かる巨大なハーバー・ブリッジ(1932年建設)も横なぐりの雨にかすみます。
シドニー湾は,太平洋に面するポート・ジャクソン湾の入り江の1つで,リアス式海岸を形成する溺れ谷です。縄文海進のオーストラリア版ともいえます。
地図で見ると複雑な海岸線がわかります。
ハーバー・ブリッジの傍らの”ロックスRocks”と呼ばれる一帯は,近代的な”シティCity”のビル街とは対照的な古い街並を残しています。
”ファースト・インプレッション”と呼ばれるモニュメントが置かれ,イギリスからの最初の入植を記念しています(1788年1月:現在のオーストラリア・ディは1月26日)。説明のパネルには11艘の船で約1,500名が到着し,内780人近くが囚人だったと記されていました。”ロックス”の名の通り,背後には切り立った岩の崖がそびえています。
サーキュラー・キー東岸の砂岩の崖。向こう側は王立植物園
 チャールズ・ダーウィンは「ビーグル号航海記(1845)」の中で,”1836年1月12日。早朝,軽風は我々をポート・ジャクスンの入口に向かって運んだ。立派な家を散在させた緑の土地を見る代わりに,黄色を帯びた直線状の崖は,我々の心にパタゴニアの海岸を思わせた。・・・・湾内に入れば,水平な層をなす砂岩の崖の海岸が壮観で,すべて広々とした大規模なものに見えた。・・・遂に我々はシドニー湾内に碇泊した。多くの大船が繋って,倉庫をめぐらせた内港があった。・・”
と記述し,市内を巡り入植から50年も経たないシドニーの繁栄を賞賛しています。
 週が明けると天気は回復し,オペラハウスが青天に映えます。
オペラハウスから望むサーキュラー・キー。右手にロックスの倉庫街が見えます。
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1942年5月31日から6月1日にかけて日本軍の3隻の小型潜水艦がシドニー湾に侵入し,魚雷攻撃を受けて21人のオーストラリアとイギリスの兵士が死亡しました。

3艘とも沈められ,2艘は引揚げられました(当時の写真)。
2006年,謎だった残る1艘が発見されました。(オーストラリア博物館のHPから)
 74年前の今頃,中心都市シドニーはどれほどの驚きと混乱と憎悪の中にあったでしょう。第二次世界大戦ではオーストラリアの敵は赤道を越えた日本でした。
博物館の歴史展示の前を通るたびに考えさせられます。

2016年6月6日月曜日

小型有袋類に会うーフクロミツスイ・フクロモグラ

 オーストラリア博物館の陸生脊椎動物部門で現生の小型有袋類を堪能しました。
食性との関連がはっきりしている例があります。

この小さなネズミのような有袋類は
フクロミツスイHoney Possum
Tarsipes rostratus です。
以前ユーカリの花の蜜を吸う有袋類として紹介しました(5/28)。
体長は10センチに満たなく,メスが大きい。
(学名のTarsipes spenserae はシノニム:同一種の異名)
顎の形状,特に下顎は棒の様に細くなっています。
(1目盛り7mm)
歯式はI2/1 C/1/0 P1/0 M3/3=22。
歯は小さくなり広い歯隙をもち,
この標本では大臼歯が2本に減っています。
細長い空隙を舌を使って蜜を吸うのでしょうか。
こちらは金色の毛皮を持った
フクロモグラSouthern marsupial mole :
Notoryctes typhlops
もちろん有袋類である。
顎には明瞭なトリボスフェニック型臼歯(哺乳類の祖先型の臼歯)が植立し,
口蓋がしっかりと食物を抱え込むように発達し,
がっしりとした頭蓋も咀嚼機能の充実をうかがわせます。
地中の昆虫類やその他の小動物を餌としています。
珍しい標本の案内や文献の助言もいただいた学芸員の
サンディ博士 Dr Sandy Inglebyと。
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博物館を出るとハイド・パークから望む夕空が,シドニー湾の方角に広がっていました。

2016年6月3日金曜日

Holotype (完模式標本)に会う-オーストラリア博物館・シドニー

 6月2日,西海岸のパースから東海岸のシドニーへの移動です。
    直線距離でおよそ4,800km,飛行機で約5時間。
Googleより。
主な訪問地:アデレード,パース,シドニー,メルボルン,カンガルー島。
国内の時差が2時間あるので昼の出発で到着は夜になりました。
最初の滞在場所,ワールドスクウェア付近のにぎわい。
翌3日朝,オーストラリア博物館を訪れました。
ハイド・パークに隣接する,クラシックとモダンが融合したような建物です。
古生物学の収蔵庫に案内されると,
史上最大の有袋類,ディプロトドンDiprotodon optatum の頭蓋化石が置いてありました。
今回お世話になったコレクションマネージャーのRoss Pogson 氏(専門は鉱物学)。 
さっそく,展示室のディプロトドン(背景の復元像)を案内してくださいました。
約200万年前から25,000年前まで生息していた,現在のウォンバットやコアラの仲間です。
オーストラリア博物館所蔵
ディプロトドンの臼歯は草食動物の特徴を持ち,歯冠はセメント質で覆われていました
拡大して他の動物との類似点や相違点を探します。
その日の終了近く,Pogson氏は鍵付きの収蔵庫に案内してくれました。
この区域には普段は目にすることができない特別の標本があります。
貴重な,ホロタイプ(holotype:完模式標本)が収蔵されています。
ホロタイプは動物の学名を登録するための基準になった標本(通常はタイプ標本と呼ぶ)で世界に一つしかありません。

そのひとつ,Diprotodon australisのタイプ標本,そしてその時の論文です。
<現在は Diprotodon optatum にまとめられています>
オーストラリア博物館には哺乳類を含む膨大な数のタイプ標本が収められていました。
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半月の滞在で有袋類が身近に思えるようになってきました。
パラレルワールドを見るような気持ちは残っていますが,有袋類がこのまま地球上に存在できる環境を具体的に考える必要を感じています。
ハイド・パークから眺めたオーストラリア博物館。



2016年6月1日水曜日

臼歯は止まらないーNabarlekに会う

オーストラリアでぜひ会ってみたいカンガルーがいました。
生え替わり続ける臼歯を持つ小さなワラビー(小型のカンガルー)です。
ミュージアム・ショップに売っている小さな図鑑(ガイドブック)にも載っています。
どんな歯なのか,気になっていました。
西オーストラリア博物館所蔵・現生標本
これがヒメイワワラビー Nabarlek 
Petrogale concinna 
(カンガルー科 イワワラビー属)
の頭蓋骨です。
上下の顎には小臼歯が1本と5本の大臼歯が見えます。
有袋類の基本歯式は大臼歯4本です。
古生物学部門の化石標本にも当たってみました。
西オーストラリア博物館所蔵・古生物学部門
Petrogale 属の棚の中を探すと,気になる標本がありました。
歯冠先端が顔を出した第四大臼歯の遠心(左)に,5番目が歯胚の状態で埋まっています。
この標本は P. concinna に分類されると思います。
Petrogale 属の他の種は第四大臼歯の遠心(右)は顎骨がしっかり閉ざされています。
ヒメイワワラビー(上記ガイドブックの写真から)
ハ虫類の多生歯性から哺乳類の2生歯性への移行は謎の多い問題です。
この不思議な歯を持った小さなカンガルー(ワラビー)が鍵を握っているかも知れません。しかし残念なことに,絶滅の危機にあるとのことです。
お世話になった,古生物部門のMikael Siversson 博士とCassia Piper 技官(女性)。
コーヒータイムがなかなか楽しい。