2016年12月12日月曜日

カンガルーにヘソの緒はあるのか?ーNature Seminar #14

 今年のネイチャー・セミナーは「有袋類の解剖学」で閉じることになりました。
タイトルの写真はタロンガ動物園(シドニー)の解説板です。
お菓子のジェリービーンのようなカンガルーの新生児。
「ヘソの緒」を付けてお母さんの乳首を目指しているようです。
この疑問は、最初に滞在したアデレードの南オーストラリア博物館の目立たない標本から始まりました。
"Umbilical cord"はヘソの緒のことです。ガラス容器の中にヘソ付近からヒモを付けた胎児がいます。端に付いているのは胎盤でしょうか。
シドニーのオーストラリア博物館でも、標本室の中から出していただきました。
たしかにヘソの緒にみえます。
私たち真獣類(有胎盤類)は尿膜(の血管)を胎児側の胎盤として母体とつながります。
有袋類の胎盤は卵黄嚢を胎児側とします。しかし、母体とのつながりは弱いのです。
右の図は有袋類の中でも胎盤の形態には多様性があることを示しています。
From ”Textbook of Veterinary Histology” (1976)
この写真は妊娠3週のイヌの胎児(番号1)の様子です。
大きな卵黄嚢(4)が卵黄嚢胎盤(6)を形成しています。
しかし、この胎盤は発生が進むにつれて尿膜性の胎盤に置き換えられます。
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多くの真獣類でも一過性には卵黄嚢胎盤をつくり、(絨毛)尿膜胎盤に移行して出産します。強い母体とのつながりが太いヘソの緒となります。
 私の生後間もないオポッサムの腹部にもヘソの緒の痕跡は見つかりませんでした。
多くの有袋類は尿膜胎盤に移行することなく未熟な子供を産み、ヘソの緒は出産時には消えてしまうようです。(案内板の写真もジェリービーンとヘソの緒との関係は微妙な気がします)
今回の参加者は"Nature Seminar"を始めた時のメンバー(海老原先生・診断学、楠瀬先生・生物学、上田先生、疋田先生・矯正学)になりました。
 ”参加したいのですが卒業試験を控えていますので”、と伝えてきた6年生が2名いたことを書き留めておきましょう。


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