太古の昔,この山間の川をクジラやカイギュウ,セイウチが泳ぐ姿を想像してみましょう。
江戸時代の「会津石譜」とういう書物にもこの付近は化石の産地として記されていました。平成4年(1993年),当時の耶麻(ヤマ)郡高郷村はこの一帯を塩坪化石層として天然記念物に指定しました。
塩坪層は泥岩(緑),砂岩(黄),れき岩(オレンジ),凝灰岩の層が100mの厚さに堆積しています。含まれる化石から1,000万年前(中新世後期)の海に溜まったこの地層であることがわかります。(地層は手前に向かって低くなり,右から左へ低く傾いています。同じ地表面でも時代の違う地層が現れます)
河原には「ポットホール」と呼ばれる穴があいています。岩石や礫が川の流れで回転してあけた穴です。
1973年,会津女子高校の生徒と小林昭二先生(写真)がポットホールの壁から発見したクジラの椎骨が塩坪層の哺乳類化石の第一号でした。
<たかさとカイギュウランドに展示されている化石>
その後もクジラ化石の発見は続き,頭蓋骨や耳骨からナガスクジラの仲間が含まれていることが分かりました。
堆積状況のサンプルとして現地に保存されているクジラの骨化石。
1980年以降の発掘によるカイギュウ化石の産出場所。
頭蓋骨を含む化石は,カイギュウ類の進化を探る貴重な標本となっています。
<高郷町所蔵のカイギュウ化石>
「アイズタカサトカイギュウ」 Dusisiren takasatensis (Kobayashi et al. 1988)
海牛目ジュゴン科ヒドロダマリス亜科 の新種です。
<ステラーカイギュウの1/2サイズ模型。実物は7mありました。カイギュウランドの展示>
ヒドロダマリス亜科(ダイカイギュウ亜科)は,北太平洋の冷たい海に適応して大型化し歯を失くしていった仲間で,1968年に人間によって狩り尽くされたステラー海牛を最後に絶滅種となりました。アイズタカサトカイギュウは進化の道を探る貴重な標本です。
高郷町は会津盆地をのぞむ越後山脈の一角にあり,太平洋と日本海のほぼ中央に位置し,標高400~500mの山間にあります。これほどの内陸に大型の海生動物化石が産出するのはなぜでしょう。
1650万年前〜900万年前の日本の姿を復元すると多くの島で成立っていたようです。高郷町も海の中にあり,海の生き物が多数生息していました。1500万年前には活発な海底火山の堆積物(グリーンタフと呼ばれる)が層をつくり,その上に海生哺乳類化石を含む塩坪層が堆積しました(1,000万年前)。現在の阿賀野川はそれらの地層が隆起し陸上に現れた後に形成されたものです(200万年以降)。したがって,「阿賀野川ではクジラは泳いでいませんでした」。しかし今でも太古の生命を洗い出し,語りかけています。
<高郷町所蔵のカイギュウ化石>
「アイズタカサトカイギュウ」 Dusisiren takasatensis (Kobayashi et al. 1988)
海牛目ジュゴン科ヒドロダマリス亜科 の新種です。
<ステラーカイギュウの1/2サイズ模型。実物は7mありました。カイギュウランドの展示>
ヒドロダマリス亜科(ダイカイギュウ亜科)は,北太平洋の冷たい海に適応して大型化し歯を失くしていった仲間で,1968年に人間によって狩り尽くされたステラー海牛を最後に絶滅種となりました。アイズタカサトカイギュウは進化の道を探る貴重な標本です。
<たかさとカイギュウランドに展示されている化石>
セイウチの祖先とされる「イマゴタリア」の上顎と上腕骨の化石。肉食の海生哺乳類の化石として貴重です。「目でみる日本列島のおいたち」 築地書館刊より |
私は地学は門外漢なのですが、わかりやすかったです。
返信削除地図上で見ると内陸ど真ん中に高郷はあるのだとわかり、こんなに化石が見つかっているのが、改めて不思議に思いました。
なお自分も「森のはこ舟アートプロジェクト」HP内で高郷関連のブログを書いております。お願いになるのですが、そのブログ内で「目で見る日本列島のおいたち」の写真を借用させていただいてもよろしいでしょうか?(直、化石研のことも書く予定です)
ちなみに、こんな感じのブログになります。
http://www.morinohakobune.jp/blog/20151101.html
高郷ではお世話になりました。
削除どうぞ、ご利用ください。
「森のはこ舟アートプロジェクト」を拝見いたしました。ブログから生きいきとした活動が伝わってきました。
鈴木さん
返信削除ありがとうございます。アップしたらお知らせいたします!
鈴木さん
返信削除お元気ですか?遅くなりましたが、「化石研究会&パークゴルフ」ブログアップしましたことをおしらせします!お暇なときにでもお読みいただければ幸いです。
また鈴木さんに了承をいただいた写真ですが、今回の記事を書いてみての都合 上、使用しない判断に至りました。。こちらの勝手で申し訳ないです。。
資料としてとても分かりやすいと思ったので、今後のプロジェクトでまた化石関連の記事を書く際にお世話になることもあるかと思います。今回は、ほんとうにすいません。。
今後ともよろしくお願いいたします。
http://www.morinohakobune.jp/blog/20151114.html
佐川友美さん
返信削除明けましておめでとうございます。そちらは雪が深いのではないでしょうか。
編集されたブログを拝見し,河原での巡検の様子を懐かしく思い出しました。
新しい年もご活躍ください。