2022年11月9日水曜日

皆既月食と天王星食(2022/11/08)ー見えないものが写る

  天気予報では皆既月食の空模様を気にして、更に惑星食が重なるのは442年ぶりとのことでニュースでも話題になっていました。

 当日(11/08)は雲もなく寒さもそれほど感じない「月見日和」。気が向いた時にシャッターを切ることにして月食を楽しむことにしました。

 手すりに乗せて手動で撮影. (HX400V). 

 倍率の高いデジカメで月を追うと思ったより動きが早い。6等級の天王星は私の肉眼では見えず、ファインダーでも確認できませんでした。

18:24 撮影

19:11 撮影
19:58 撮影(RX100III)
20:22 撮影. 矢印の小さな光は天王星
20:40 撮影 月の色が変化
20:52 撮影. 青い周辺部
21:09 撮影
 肉眼では皆既月食の満月はオレンジがかった”赤銅色”のブラッドムーンでした。地球の影は月からは一面の夕焼けに見えているのでしょう。太陽光が当たり始めると月面が青や紫に染められて写っていました。地球のオゾン層を通過した青い光が月に投影された”ターコイズフリンジ”と呼ばれる現象でしょうか。
*驚いたことに、ファインダーで見えなかった”天王星食”の動きが捉えられていました。天王星が月に接して”潜入”が完了する瞬間も。思わず「奇跡だ」と声を発していました。


  次の皆既月食は約3年後、同時に惑星食が現れるのは322年後の土星食とのこと。
 地球に住む私たちには楽しむことがまだまだありそうです。



2022年8月26日金曜日

小さなキツツキ:コゲラ

  朝の散歩にわずかな林はありますが、多くの緑は庭の中です。
それでも、小さな鳥たちにとっては伴侶を探しテリトリーを競い合う”自然”です。
 庭木の移り渡る小さな影が目に留まりました。濃い褐色に白い斑点が帯状に並んだほぼスズメ大の小鳥、「コゲラ」です。

 Memo:コゲラ. 体長約15 cm。Dendrocopos kizuki (キツツキ目 キツツキ科)日本最小のキツツキ。留鳥。英名は Japanese Pygmy Woodpecker。日本周辺の東アジアが生息域。昆虫などの小動物を食べ、広い縄張り(20ha)を持つ。

 枝を回りながら上下に移動して細かく動き、正方形の幾何学模様のジャケットを着ているように見えます。「ギー」ときしむように鳴きますが、今日の動画では中ほどで1度だけ聞こえます。


この近所を縄張りにしているなら更に「つがい」になっているなら、これからも出会う機会があるでしょう。楽しみです。



2022年8月2日火曜日

猛禽類 ”サシバ” に出会う

 2年前 (2020)に姿を見かけて、画像に残したいと思っていたサシバに出会えました。
(2020/09/19 スマートホンのカメラで撮影)
住宅地にわずかに残された林の梢に、カラスとは違う灰色の羽ばたきに気がつきました。
タカ目タカ科 Butastur indicus 体長約50cm この個体はメスの成鳥。
近くで繁殖しているのだろうか。
メモ:トカゲなどの小動物や昆虫を捕らえて人里近くでも生活する。
4月ごろ夏鳥として飛来し9月ごろから南西諸島を経由して東南アジア、ニューギニアに渡り越冬。
こずえの間からのぞく鋭いくちばしと眼光

南へ渡るまでに飛翔する姿をとらえたいものです。
現地は茨城県牛久沼から稲敷台地に入りこんだ谷戸(谷津)の斜面林です。住宅に囲まれ伐採もされていますが、次のシーズンも彼らが止まる木が残るでしょうか。

2022年7月22日金曜日

巣立ちの1日ーヒヨドリ

桃の木の中に動くものを見つけました。
3羽のひな鳥です。

この木に鳥の巣はなかったので、今朝来たのです。
体を寄せ合って頼りなく枝に捕まっています。
まだ羽毛の生えそろわないヒヨドリの雛(ひな)です。
”ヒーヨ、ヒーヨ”とかん高い親鳥の声に反応します。

親鳥は離れた電柱から雛鳥に呼びかけますが、人の気配がなくなるまでは近づきません。
枝や葉に隠れるように素早く雛鳥に餌を与えては飛んでいきます。

メモ:ヒヨドリ:スズメ目ヒヨドリ科 Hypsipetes amaurotis(英名 Brown-eared Bulbul)日本周辺の鳥。スズメとハトの間ほどの大きさ。大きく波打つような飛び方。冬に果物を置くと他の小鳥を追い払ってしまうので困る。
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 午後になって、3羽が枝をぎこちなく渡り歩く様子がみられました。そしていつの間にか姿を消していました。桃の木にいたのは朝8時ごろから午後3時ごろまで。まだ自由に飛べるとは思えないので、親鳥と別の木に移っていったのでしょう。
 ヒヨドリの雛は卵からかえって1週間程度で巣立ち、自力で生活するまで約1ヶ月は親鳥の保護下にあるとのこと。今日は何日目だったのでしょう。無事に成長していきますように。


2022年4月30日土曜日

ガンガラーの谷・サキタリ洞遺跡ー港川人の記憶

 沖縄島南部にある国内最大級の鍾乳洞「玉泉洞」の一部をなす「ガンガラーの谷」ガイドツアーに参加しました(2022/04/08)。人類学の大きな発見が続く「サキタリ洞遺跡」はツアーの出発点にあります。
(開けた窪地は石灰岩の溶食による崩落でできた陥没ドリーネ)
東側の洞口は窪地を下りた所に開いて、奥は「ケイブ・カフェ」が営業されパラソルが天井の「つらら石」(鍾乳石)からの水滴を受けています。
平面図:沖縄県立博物館・美術館 2018 『沖縄県南城市サキタリ洞遺跡発掘調査報告書』に加筆
 サキタリ洞の入口は東側(図の下側)にあり床面積は約620m2、天井の高さが約7mあり、床の標高は約40mです。港川人が生活していた最終氷期最盛期には海面が120mほど低下したとするとこの付近の標高は150m以上あったことになります。
 西側の洞口への階段を登り、振り返るとシートに覆われた「調査区II」がみえます。日本最古(9,000年以上前)の埋葬人骨が出土しています。
 西側洞口階段付近の「調査区I」。6点の人骨(幼児の環椎、上顎乳犬歯、下顎第三大臼歯、肋骨、手根骨、足根骨)(23,000年~14,000年前)、石英製の石器(14,000年前)、世界最古の釣り針(23,000年前)を含む豊富な貝器、日本最古の貝製の彩色装飾品(23,000年前)、食糧と思われる1万点以上のモクズガニやカワニナ遺体など重要な発見が相次いでいます。炉址と思われる焼跡(35,000年前〜)も検出されています。
山崎ほか:沖縄県南城市サキタリ洞遺跡の発掘調査(2009 2011 年),人類学雑誌(2012)
旧石器人の一例
 西側洞口の外側にある「調査区III」。動物遺物や人工物は少ないが貝類、甲殻類、石英が出土しています。
 サキタリ洞遺跡は人骨と道具が一緒に出土することで旧石器人の存在を確実にし、縄文時代まで長期間利用されてきたことで沖縄人の系統や文化の連続性の検証を可能にしました。
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 サキタリ洞を出るとクワズイモが生い茂り,アカギが立ち並び,オオタニワタリなどのシダ類が亜熱帯の緑を広げています。
(「歩くガジュマル」の説明)
ガジュマルの気根の支柱根(幹を支える)は長い年月で入替わることで樹木が移動します。
ツアーは右手に「雄樋(ゆうひ)川」をみながら進みます。35,000〜10,000年前の地層から産出している大量のモクズガニやカワニナ、最古の釣り針と同じ地層(23,000年前)から産出するオオウナギなど旧石器人の食料調達の大事な川だったのでしょう。
川の対岸にある崖の断面には鍾乳石が露出しています。雄樋川はサキタリ洞のある石灰岩層と右の石灰岩層で造られた大きな鍾乳洞の天井が崩落してできた谷(カルスト谷)を流れ下っています。

支給されたランタンをかざし「イキガ洞」に入ります。
つらら石は下流に向かって傾いているのが不思議ですが、中の巨大なつらら石は男神として祀られています。つらら石が下流に向かって傾いているのが不思議です。近くの「イナグ洞」には女神が祀られています。
ツアーは途中から引き返しますが、恵みの雄樋川は祈りの場であるイキガ洞を下り「港川人」の遺跡を通って太平洋に流れ込みます。
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 ツアーの人気スポット「大主(うふしゅ)ガジュマル」。
樹高20m、樹齢150年のガジュマル。見えるところのほとんどが太さや感触がさまざまな気根です。天と地をつなぐように垂れている姿は巨大な生き物を感じさせます。

「天然橋」と呼ばれる鍾乳洞の天井が露出した地形も異質な雰囲気を強調します。
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上のスケッチはガイドさんの説明図。下はテラスからの遠景。
ガンガラーの谷を上から望むように造られたツリー・テラスで遺跡の説明を受けます。海沿いを通る道路の丸で囲ったあたりが港川フィッシャー遺跡(22,000年前)です。ここから1.5kmの距離で雄樋川に沿った標高20~30mの石灰岩層にあります。
ツリー・テラスを降りてツアー最後の遺跡「武芸洞」に向かいます。

沖縄県立博物館・美術館 2010 『沖縄県南城市武芸洞遺跡発掘調査概要報告書』

 武芸洞はサキタリ洞と同じ洞穴群(玉泉洞ケイブシステム)に属します。縄文時代にあたる2,500年前の石棺に埋葬され貝製のブレスレットを装着した人骨、6,000年前の爪型文土器の貴重な発見がありました。港川人とのつながりが解明されるのを待っているようです。
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    山崎ほか:沖縄県南城市サキタリ洞遺跡の発掘調査(2009 2011 年),人類学雑誌(2012)

 歩く距離約1km、所要時間約80分の「ガンガラーの谷」ガイドツアーは沖縄島南部の自然と地史を満喫しながら人類史研究の現在を知ることができる貴重な経験でした。
 2009年1月末、日本古生物学会の会場となった沖縄県立博物館・美術館で「港川人」に会いました。故郷に戻った実物の標本からは強い迫力と安堵を感じました。この返還(3号と4号標本)を期に沖縄の旧石器人関連の発見が増加し空白を埋めていくような印象があります。
  沖縄の石灰岩は貴重な旧石器人骨を残し最新の遺伝子解析の可能性を提供しています(Scientific Reports  11,  12018 (2021)など)。新しい発見が楽しみです。