3月21日から第20次野尻湖発掘(第1次は1962年)が10日間の日程で開始されました。
野尻湖は妙高,黒姫,飯綱,斑尾の山々に囲まれた標高654mの天然の湖です。湖底の地層は5万年から3万3千年程前に堆積し,大型哺乳動物(ナウマンゾウ,ヤベオオツノジカ)や石器・骨角器(人骨の産出はまだない)が産出します。
水力発電のために湖水が利用されていますが,冬の間は野尻湖に流入する川の水が減少し湖面が低下します。その時期,湖底発掘が可能になります。
発掘は除雪作業から始まりました。
ナウマンゾウの骨の一部。鑑定は哺乳類の専門班がおこないます。
ラベルが付けられ写真とともに記録されます。
化石の状態から骨が生(なま)の時に割られた可能性が指摘されました。
当時の人間との関係が想像され,人類考古班も加わります。
化石の堆積年代を決めるために地質の専門班が産出した地層を調べます。
4m x 4mmの発掘区画(グリッド)の壁は,地層を示す重要な役割を持ちます。
時代の異なる火山の噴出物のは決め手の1つになります。鉱物組成が火山により異なります。(アオヒゲと呼ばれる火山灰層の拡大:中央の白い鉱物は雲母)
化石を記載する係は平面的な位置や標高,堆積状況を記録します。
全体の化石や遺物の分布,足跡の化石などの記録にはやぐらが組まれます。
T2と呼ばれる4万年程前の地層から発見されたナウマンゾウの肋骨。
化石を紙や線維で補強しながら周囲を石膏でかため,注意深く取上げます。
産出標本は野尻湖ナウマンゾウ博物館に保管され,その後の強化・クリーニングを経て研究に供されていきます。当時の古環境を知るために,植物化石,貝化石,昆虫化石,花粉・珪藻などの微化石,生活の跡を示す生痕化石,などの専門グループが共同し,氷河期の日本に関する総合研究になります。
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(*産出標本の写真使用は野尻湖発掘調査団の承認を得ています)
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