沖縄島南部にある国内最大級の鍾乳洞「玉泉洞」の一部をなす「ガンガラーの谷」ガイドツアーに参加しました(2022/04/08)。人類学の大きな発見が続く「サキタリ洞遺跡」はツアーの出発点にあります。
平面図:沖縄県立博物館・美術館 2018 『沖縄県南城市サキタリ洞遺跡発掘調査報告書』に加筆 |
西側の洞口への階段を登り、振り返るとシートに覆われた「調査区II」がみえます。日本最古(9,000年以上前)の埋葬人骨が出土しています。
西側洞口階段付近の「調査区I」。6点の人骨(幼児の環椎、上顎乳犬歯、下顎第三大臼歯、肋骨、手根骨、足根骨)(23,000年~14,000年前)、石英製の石器(14,000年前)、世界最古の釣り針(23,000年前)を含む豊富な貝器、日本最古の貝製の彩色装飾品(23,000年前)、食糧と思われる1万点以上のモクズガニやカワニナ遺体など重要な発見が相次いでいます。炉址と思われる焼跡(35,000年前〜)も検出されています。
山崎ほか:沖縄県南城市サキタリ洞遺跡の発掘調査(2009 ~ 2011 年),人類学雑誌(2012) |
旧石器人の一例
西側洞口の外側にある「調査区III」。動物遺物や人工物は少ないが貝類、甲殻類、石英が出土しています。
サキタリ洞遺跡は人骨と道具が一緒に出土することで旧石器人の存在を確実にし、縄文時代まで長期間利用されてきたことで沖縄人の系統や文化の連続性の検証を可能にしました。
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サキタリ洞を出るとクワズイモが生い茂り,アカギが立ち並び,オオタニワタリなどのシダ類が亜熱帯の緑を広げています。
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ツアーの人気スポット「大主(うふしゅ)ガジュマル」。
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歩く距離約1km、所要時間約80分の「ガンガラーの谷」ガイドツアーは沖縄島南部の自然と地史を満喫しながら人類史研究の現在を知ることができる貴重な経験でした。
上のスケッチはガイドさんの説明図。下はテラスからの遠景。 |
ガンガラーの谷を上から望むように造られたツリー・テラスで遺跡の説明を受けます。海沿いを通る道路の丸で囲ったあたりが港川フィッシャー遺跡(22,000年前)です。ここから1.5kmの距離で雄樋川に沿った標高20~30mの石灰岩層にあります。
沖縄県立博物館・美術館 2010 『沖縄県南城市武芸洞遺跡発掘調査概要報告書』 |
武芸洞はサキタリ洞と同じ洞穴群(玉泉洞ケイブシステム)に属します。縄文時代にあたる2,500年前の石棺に埋葬され貝製のブレスレットを装着した人骨、6,000年前の爪型文土器の貴重な発見がありました。港川人とのつながりが解明されるのを待っているようです。
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山崎ほか:沖縄県南城市サキタリ洞遺跡の発掘調査(2009 ~ 2011 年),人類学雑誌(2012) |
2009年1月末、日本古生物学会の会場となった沖縄県立博物館・美術館で「港川人」に会いました。故郷に戻った実物の標本からは強い迫力と安堵を感じました。この返還(3号と4号標本)を期に沖縄の旧石器人関連の発見が増加し空白を埋めていくような印象があります。
沖縄の石灰岩は貴重な旧石器人骨を残し最新の遺伝子解析の可能性を提供しています(Scientific Reports 11, 12018 (2021)など)。新しい発見が楽しみです。